がしょん。がしょん。がしょん。がしょん。





























 がしょん。がしょん。がしょん。がしょんっ。































「う、うわあああああ!!!!!!!」





 僕を見た途端に逃げ出す子供。



 でも、逃がさない。





 僕は子供を追う。あっという間に追いつく。



 そしてその背中に左腕のドリルを突っ込んでやる。

















「ひぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」







 子供は壮絶な悲鳴をあげる。





 ドリルが削いで飛び散った血と肉片の一部が、僕の身体にも飛び散りくっつく。すでにこびりついている血痕や肉片の上に。













 やがて子供の身体がちぎれる。子供は泣き叫びながら、上半身だけになりながら、内蔵を晒し、引きずりながら、



 なおも手で這って僕から逃げようとする。













 まだ楽しめそうだなあ。にやり。



















 子供の右手をちぎり飛ばす。









「ぅああぁ!!!!!!」









 良い悲鳴。続いて左手。









「あああぁぁぁぁ!!!!!!!!」











 子供の左手が飛び跳ねる。血と肉片がまた飛び散る。









 そこまでやってから、僕は子供を仰向けにひっくり返し、その顔を覗き込んだ。



















 まだ生きてた。





 そして、激痛・恐怖・絶望がぐちゃぐちゃに入り混じって歪みに歪んだ表情が、僕を見ていた。







 いいねぇ、最高だ、そのカオ。















 でも、もう見納めだねえ。君にはもう飽きた。





 子供にそう言い捨てる。















「あ、あ………ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」











 子供の悲鳴は、僕が子供の顔面にドリルを叩き込むと同時に、途切れた。









































 子供のばらばらぐしゃぐしゃになった死体を後にして、僕はまた歩き出す。











 がしょん。がしょん。がしょん。がしょん。



















 さっきの子供以外に、人の気配はしない。

















 それが普通だろう。あの子供だって、さっきまで生きていられたのが奇跡なのだ。





 このあたりは、あらかじめミサイルでありったけの爆撃を加えておいたのだから。







 まあ、そんな奇跡が起こったおかげで、僕はついさっき、なぶり殺しの楽しみを味わえたわけなんだけれども。























 しばらく暇になりそうだ。

































 これからどうしようか。





 そう考え始めたときだった。





























「楽しんでいるわね」













 あの声を、久しぶりに聞いた。







 かつて、眠っていた僕を目覚めさせた、あの声だった。























 僕は答えた。そりゃそうさ、と。

























 僕は破壊、虐殺を楽しみ、人々に恐怖を植えつけることを楽しむようにプログラムされているのだから。









 だから今までの行為が楽しくないわけがないのさ。



















 そしてこれらは僕の使命でもある。













 使命を与えられて、そしてそれを楽しんでいけるなんてさ、素晴らしいと思わないかい?



































「気持ちはよくわかったわ。あなたはとても、とてつもなく、誰よりもこのお祭りを楽しんでいるのね」











 それはそうだろう。僕はこのお祭りのギャラリーの1人であると同時に、主催者にも等しいのだから。













「そうね。主催者さん、ありがとう。あなたほどではないけれど、私も今、とても楽しいの」













 いやいや、礼には及ばないよ。僕を起こしたのは、君だからね。





























「けれど、残念ね。長続きしないのよ、このお祭りはもうすぐ終わる」









 え? それはまたどうして?

















「あなたは永遠にこのお祭りを楽しむつもりでいるようだけど、それは叶わないの」









 どうして?

























「あなたが、もうすぐ止まるから」













 なんだ、そんなことか。知っているよ。

























「どうして知っているの?」











 僕はロボットさ。僕は機械さ。









 機械が動くには動力が要るだろう?









 でも、僕は長いこと、動力を補充しないまま、こうして動いている。









 補充されないまま動き続けてたら、そりゃあいつかは止まって当たり前だよ。





























「知っていたのね、じゃあ。でも、止まるとわかっているならなぜ動力を補充しないの」













 ええと、今となっちゃあ、自分としても馬鹿やったなあって思うんだけどね。















 自分の家、つまり僕が作られた研究所なんだけど、自分で破壊しちゃった。















 だから、動力の補充って、自分でやりたくっても、もう2度と出来なくってねえ。

























「そこまで知ってる割には、どうしてそんなに楽観的なの?」











 楽観? 違うさ。











 確かに自分の家破壊したのは馬鹿なことしたって思うけどさあ。















 多分、家が残ってたら。























 今みたいに、自分のやってることを、思いっきり楽しんだり出来ないと思うんだよ。































 要するに、時間に限りがあるからこそ、今この瞬間が無茶苦茶に楽しいってことだね。































「限りない楽しみより、限りある楽しみのほうが好きだ、そういうこと?」



















 要約するとそういうことになるねえ。

















 限りない楽しみってのもありかもしれないけれど、なんか、だるくもなりそうだしねえ。











 けれど限りがあれば、それまでにはじけてやれって気持ちがわくかもしれないから。











 それが、楽しみと言うものを格別な味にしてくれるのさ。































「変なの」













 ? 何が? まだ、何かあるのかい?



























「あなたはロボットなのに。今聞いた言葉、まるで人間の感覚みたいだわ」



















 ははは、かもしれないねえ。









 何せ、一応、僕を作ったのは、どんなにいかれ狂っていようと、人間だから。











































「う、うぁっ………うわあああああああああ!!!!!!!!」









 おっと、意外にもいるもんだねえ、生き残り。しかもまた子供とは。







 奇跡ってのは、1度起こると2度3度起こったりするものなのかな?









 話の続きは後にしてほしいな。ちょっと行ってくるから。



















「行ってらっしゃい」













 行ってきます。

























 そして僕はまた、悲鳴をあげて逃げる子供を追った。




















       

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