ホッ ホホッ





 完成じゃ 完成なのじゃあ





 この世の科学とワシの世界最高の頭脳を結集した

 究極のロボ ついに完成じゃあ













 世の俗物どもめ

 よくもワシをコケにしてくれおったなあ

 復讐じゃ 復讐してやるぞ

 このロボットで皆殺しじゃあ













 そうじゃそうじゃ

 このロボに名前を付けてやらんといかんなあ

 お前はこれからワシをないがしろにした者どもに

 恐怖を与えに行くのじゃ



 そうじゃそうじゃ

 恐怖ロボじゃ

 お前には恐怖ロボという名が最もふさわしかろう















 さあ 行くぞ

 復讐開始じゃあ

 スイッチオーン











 カチッ









 ウイイイィィィィーーーーーーーーーン







 おお 動いておる動いておるぞ

 猛っておるぞお

 お前もやる気十分なんじゃなあ















 ん?

 なんじゃ このネジは

 どうしてこんな所に転がっとるか







 ウイイイィィィィーーーーーーーーーン









 !?

 な なんじゃ なんなのじゃ

 どうしてこっちにくるのじゃ

 どうしてこっちにドリルを向けているのじゃ

 ワシはお前の生みの親じゃぞ



 やめろ やめてくれ やめっ























 ぎゃあああああああああああああ













































 僕の名は恐怖ロボと言うらしい。
 僕の生みの親であり、たった今僕が腹部にドリルを叩き込んで殺した、世界への復讐心にまみれた博士がくれた名前。
 もっとセンスのいい名前、浮かばなかったのかなあ。ジェノサイドマッスィーンとか。



 ああ、ちなみに博士は僕が誤作動を起こしたとか思いながら死んでいった。
 組み込み忘れられたと思われる、僕の部品らしいネジが1本、博士の死体のそばに転がってるし。





 でも、僕は正常。僕が博士を殺したのは誤作動じゃないんだよね、実は。





 博士は僕の思考にこうプログラムした。
「すべての人間に恐怖と殺戮を与えるのだ」と。
 だから僕はそのプログラムに従って動いたに過ぎない。
 だって、博士だって『人間』でしょ?

 そして、博士は僕に殺される間際、明らかに恐怖していた。誰でもわかるくらいにね。
 まあ、ショックの大きさもあったんだろうね。まさか自分で作ったロボットに殺されるなんて全然思ってなかっただろ。
 それに加えて、ドリルの回転音が自分に殺意を持って迫ってくる。覚悟してたって怖いだろうね。
 博士。僕が言うのもなんだけど、復讐なんて考えてもろくな事ないよ? 自分が作ったロボットに殺されるなんて、なんとも悲惨だよね?

















 さて、これからどうしようかなあ。
 頭の中に、遺言になっちゃった博士の言葉。
「すべての人間に恐怖と殺戮を与えるのだ」
 それを達成しようとするのはいいけど、1人1人にドリルを叩き込んでたら時間かかるよね。



 ああそういえば、今の僕の手って。
 右手に博士を殺したドリルパーツ、左手に構造不明のミサイルパーツ(なぜか無限大にミサイル発射ができるんだよね、これ。どうなってんの?)。



 左手だけじゃ足りない。右手もミサイルパーツにしてしまおう。
 幸い、博士はドリルパーツとミサイルパーツをそれぞれ2つずつ作っていたので、換装に時間はかからなかった。





















 これでいいかな。
 最初は「殺戮」だけになるけど、不自然な大量虐殺はやがて人々の心に「恐怖」を生むだろう。
 そうなればこっちのものだ。多分。



 と、出動の前に1つ気づいた。
 目が熱い。なんで熱い。
 これって高エネルギー反応?



 試しに、念じる。









 いきなり視界が真っ白になった。ビックリした。



 そして視界を取り戻した時、周囲は博士のラボじゃなくて焼け野原になっていた。



 ああ、これって多分、目からフラッシュビームでも出したんだな。







 ……って、あれ?
 足元がふらつく。そしてあっさり地面に倒れてしまった。
 意識が遠のいていってしまう。



 ……さっきのビームでエネルギーを使いすぎちゃったのかな。



 あー、しまった。知らなかったとはいえ、軽々しく使うんじゃなかったよ。
 起動したてでエネルギー充填が上手くいっていないのもあったのかなー。





 しょうがない、しばらく眠ろう。
 博士の遺言を実行するのは、もう少し先かな。
 次に目覚めたときは、記憶真っ白になってるかもしれない。

















 それでも僕は恐怖ロボとなりうるかもしれない。
 博士の遺言はもはや僕の本能だから。














       

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