「目覚めなさい」



























 ――誰なの?



























「私はあなたを目覚めさせるもの」



























 何のためなの?



























「私の知るところではありません。ですが、目覚めればあなたは自ずと知ることになりましょう、目覚めし理由を」



























 目覚めればいいんだね?



























「はい」







































 僕は目覚めた。





 目覚めて、最初に僕がしたのは、状況の確認だった。





 自分が、随分と変な姿をしていることに気付いた。





 両手にミサイル。
 身体はなんだかとても機械的だった。

 というか、僕は機械だった。
 ということはアレか、目から殺人ビームなんかも出たりして。
 やってみよう。

 と思ったけど、やり方はどうすればいいのだろう。





「あなたはただ念じればよいのです」





 僕を目覚めさせた声が、再び。



 そんなに簡単なものでいいの? 僕は機械なのに。





「はい」





 本当らしい。なら念じてみよう。それで目から殺人ビームでも出るかな。

























 一瞬、目の前がまばゆく光った。





 次に、ジェット機が墜落してゆくのが見えた。



 ジェット機には左翼がなかった。ジェット機はなす術もなく墜落していった。





 ――殺人どころじゃない。目から出たビームの威力は凄まじいものらしい。































 ところで、目覚めてどうしろと言うのだろう。









「あとはご自由に」









 それって、好き勝手してもいいってことなの?









「そうなります」









 なら、好き勝手してやろう。





















 僕は右手を掲げた。そしてミサイルを乱射してやった。











































「緊急事態です! あの恐怖ロボが突然動き出し突然世界中の襲撃を開始しました!」

「この報は瞬く間に世界中に伝わり、現在世界中の国々の軍隊が恐怖ロボを食い止めようと、持てる限りの武力を使って応戦しています」

「恐怖ロボは軍隊の攻撃をものともせず、悠然と破壊活動を続けています」

「ではここからは現地からレポートしてもらいましょう」





 『はいこちら現場です。現在恐怖ロボは、世界中の軍隊による爆撃にも少しもひるむことなく、逆に軍隊の兵器を次々に返り討ち的に破壊してまわっています』

 『恐怖ロボはなんという耐久力を誇るのでしょう。軍隊のミサイル総攻撃にも傷1つついておりません』

 『ただいま私の乗るヘリの後方から軍隊のミサイルが飛んできまして、ミサイルはヘリの真下を通過して恐怖ロボに向かっていきます!!
  あっ、命中! 命中しました! 爆煙に包まれて恐怖ロボの姿は見えませ……あっ、見えました!
  なんと無傷です!! ビクともしていません!! 恐るべし恐怖ロボ!!』

 『何でしょうか? あっ、恐怖ロボがミサイルを発射しました!! ミサイルは私の乗るヘリに真っ直ぐに向かってきます!!
  そして……ああっ、私の乗るヘリのメインローターを吹き飛ばしていきました!!
  そしてたった今、私のヘリの後方にあります軍用ヘリコプターを直撃、爆砕しました!!』

 『軍の必死の攻撃もむなしく恐怖ロボは無傷!! それどころか次々と軍ヘリを撃墜していきます!!
  恐怖ロボの勢いは止まるところを知りません!!』







































 凄まじいほどの爆撃が僕に向けられる。
 しかし僕はそんなものなど全く平気でいられた。
 自分の好き放題にやればいい。誰かがそう言った。
 この身体で好き放題やれとか言われたら、そりゃあもう破壊活動しかないだろう。

















 楽しい。















 果てしなく楽しかった。









































「恐怖ロボは世界中の軍の総攻撃にも全くその勢いを衰えさせる事なく、それどころか以前にも増した勢いで破壊活動を続けています」

「すでに連合軍の60%以上が壊滅状態に追いやられ、死傷者の数はなおも膨れ上がっています」





 『大変です!! 緊急事態です!!』

「どうしました、レポーターさん!?」

 『突然恐怖ロボから閃光が放たれたかと思うと、数十機にもわたる軍ヘリが同時撃墜と言う、信じられない事態が起こりました!!』

 『そして……ああっ!! たった今、恐怖ロボがさらに閃光を放ちました!! そしてたった今、私の脳みそを消し炭にしてしまいました!!』

 『何と言うこトでしョう!! すでニ連ゴウ軍ガほボ壊メツジョウ態にあルにモカカわらズ、恐怖ロぼハ余リョクを残しテイタのデす!!』

 『えー、脳みソガ吹キ飛バサレてワタくし、ちょっトクラくらシてきマシた……この先、きチントシたレぽーとヲオ届けデキるカガ心パイニなっテまイリマした』









































 気持ちいい。
 果てしなく、気持ちいい。
 落ちろ壊れろ、何もかも壊れろ。
 煙を上げて燃え上がれ。













 けど、血生臭く。
 苦しみに喘ぐ声が聞こえ。
 恐怖に泣き、震える声が聞こえ。
 悲鳴のような声も聞こえ。













 僕はどうして、こんなになるまで世界を壊すのだろう。

















 好き勝手しろと言われ、何もわからないまま、僕は向こうと互いの爆撃を繰り返す。



















 誰が、そんな事を望んだのだろう。

























「わたし」





















 僕を目覚めさせた声がした。



















 君が望んだの? いったいどうして?























「だって、あなたが目覚めて、好き放題に世界を破壊し始めたから、世界は最高に大騒ぎ」





















「あなたは世界中を爆撃する。そして世界はあなたを爆撃する。人々は叫びを交えてそれを見守り、世界は大騒ぎ」









































「わたしが欲しかったのは、そんな『エレクトロニック・パレード』」











































 ……なるほど。









































 なら、彼女の言葉でいう、『エレクトロニック・パレード』とやらは、





 もうすぐ終わりを迎えそう。





 僕への抵抗が、もうすぐ絶えてしまいそうだったから。









































 この『大騒ぎ』は、またいつか、再び僕の前に現れるだろうか。

































―――Do you wanna fly? I gonna fight.












       

INDEX BACK TOP