谷川岳 烏帽子沢奥壁 南稜フランケ&南稜 [アルパイン]


日付 2014/11/11(土)-12(日)

天候 11日 快晴
12日 曇りのち晴れ

パーティー構成 南稜
A:こうの・はるこ / B:うめたに・まる

南稜フランケ
こうの・さんび

アプローチ 10日 [21:30] 国府津==[25:00] 道の駅みなかみ(車中泊)

ルートと所要時間
11日
谷川ロープウェイ駐車場[6:30]--《0:45》--[7:15]一ノ倉沢出合[7:40]--《1:50》--[9:30]中央稜取付--《0:15》--[9:45]南稜テラス[10:10]--《2:30》--[12:40]南稜終了点--《1:45》--[14:25]南稜テラス[15:00]--《2:30》--[17:30]一ノ倉沢出合--《4:00》--[18:00]駐車場==道の駅みなかみ(車中泊)

12日
谷川ロープウェイ駐車場[4:15]--《0:45》--[5:00]一ノ倉沢出合[5:15]--《1:20》--[6:35]南稜フランケ取付[7:00]--《2:20》--[9:20]3P目終了点--《2:25》--[11:45]南稜フランケ終了点(馬の背中間部合流後懸垂下降)[11:50]--《1:00》--[12:50]南稜フランケ取付[13:20]--《1:15》--[14:35]一ノ倉沢出合--[16:00]駐車場==帰路


ルート情報
<南稜>
・今更、特記する事ないな。(他のサイトに盛り沢山だし)

<南稜フランケ>

・凹角やカンテも明瞭ではなく、広いフェースなので終始ルーファイが必要。
・ガイド本やネットではランナー(残置)が少ないって云われているが、ルーファイさえ間違わなければ(先人達が辿ったルートを辿れれば)、腐りかけたハーケンも含めて予想以上にある。(だからとランナウトは避けられませんが)
・しかし、他のルートのように先のピンを目視(探して)してルートを選定するのではなく、登り易そうなところを探しながら登るので、ピンを探すって云うよりたまたま辿ったルートに多数在ったってカンジです。
・ルート中には真新しいリングボルトが4-5個見受けられました。
・5P目の出だしの凹角部は、核心を無事抜けて気持ちが緩んでいるとチト厳しい。
・5P目の上部に行くほど草付きが悪くなる。馬の背にトラバースするタイミングが難しいかも。
・各ピッチの終了点はテラス状になっている。それぞれに残置支点も3-4本あり。
・本気ルートなんで、リードは空身で登りました。(初めての経験)

<沢沿い下降>

・テールリッジから最初の滝に向う途中のトラバース部分のFIXが切れて最後10mほど足りません。
・毎年、FIXが架け替えられています。ありがとうございます。


( ピッチ・グレードの評価は個人的なものですので参考までに )
報告&感想
一ノ倉沢 烏帽子岩奥壁 南稜フランケ。X級下。
人工登攀ではない純粋なフェースクライミングでのX級ルートは俺にとって一つの集大成としての目標でもありました。


アルパインクライミングを始めて暫くの間、ルートを選ぶ際に廣川さんのチャレンジアルパインを読んでも俺には行けないグレードだからと無意識の内に読み飛ばしていた。それからいろんなルートに入り、探すルートもW級がベースになってきた頃にふと目が留まった南稜フランケ。
初めて読んだ時、そろそろ射程圏内に捉えながらも、果たして俺に登れるんだろうか?、ルーファイが間違って敗退も出来なくなったらどうなるんだろうか?、カチはどこまで指が掛かるんだろうか、果たして無事に完登出来るんだろうか?、未知のグレードへのいろんな不安が湧き出てきた。

「かつてこのルートの3P目は日本で最も難しいフリーのピッチとされ、Y級以上のピッチが続出した現在においても充分その評価は色褪せてない。それは全体を通してプロテクションが少なく、墜落は絶対に許されないという厳しさによるものであろう。再登にあたってはその事を考慮し充分な自信と経験のもとに取り付かれたい」
日本の岩場にはこう記されている。 (余計なものを読んでしまった)

南稜フランケに想いを馳せ終了点に立つイメージを湧かせる時、この記事を思い出しては不安になった。
でも意味は理解できていた。アルパインクライミングを目指す人には深く意味のある言葉だと思う。

自信と経験とは、マルチピッチの登攀システムウンヌンではなく、登攀グレードだけでもない。経験を踏まえたルートファインディングとバリエーションでの場馴れ。共にリーダーになれる気心の知れたパートナー。使い慣れたギア類。周囲のルートの熟知。緊張感ではない集中力。フォロアーで連れて行かれるお気軽な気持ちで取り付くなって事。



んじゃ、俺が言いだしっぺだからと核心ピッチの逆算からオープニングピッチに取り付く。

取り付く前は不安と緊張感で一杯だったが、「んじゃいくよ」と言った瞬間に集中力に切り替わる。指に掛かるカチの感触。浮石の目算。立ち込むつま先からのフリクション状況。五感が研ぎ澄まされていく。耳もまた無音ではなく、風の音、鳥の声、落石の音、他のパーティーのコール、周囲の必要な状況を音として収集している。(どこのルートでもそうだけど...笑)

各ピッチ、ルートを探しながら、ロープを伸ばす。拇指丘まで踏める箇所は少ないが、カチはしっかり効くし、ソールのフリクションにも不安がない。そして草付きの悪さにブツクサ云いながら南稜馬の背に合流し、ヨッシャと一言。



ルートを間違わなければ、しっかりしたリーダーのフォロアーでなら、5.10a程度が登れればそれなりに抜けられるルートだと思います。しかし、深い想いを込めてこのルートを目指し、今でも感慨にふけるすヤツもいるんだって事をお伝えできれば幸いです。

経験を積んで楽しんで来てください。

( ピッチ・グレードの評価は個人的なものですので参考までに )



1日目
南稜

[ 11時間 30分 ]

道の駅みなかみで前泊して、ロープウェイ駐車場へ。
登攀隊はほぼいません。

一ノ倉沢出合
高巻からの懸垂があるんでここで登攀具を装着。





今日は中央稜の予定ですが、
先行PTが取り付いているようです。

昨年同様、中央稜には複数入っているとの事。
南稜は誰も見受けられないので、
今年も南稜に転進しました。

1P目
はるがトップでTakeOff






帰りは経験のため沢沿いから下山



2日目
南稜フランケ

[ 11時間 45分 ]

3Bちゃんとだと高巻いても取り付まで1時間20分

俺が着いてゆけない...(汗

1P目 X級- 40m おれ

取り付きから右上ルートが目に入るまで右にトラバースして、
草付を縫いながら気持ち右上。
トラバース後の直上も目に留まるが意外と悪い。
終了点手前は凹状を右〜左に辿ればラク。

出だしは逆層と言われるが、フリクションが効くので、
トラバースする気持ちの問題でX級-かな。

1P目 トラバースしてきて振り返る。

傾斜が緩んだらトラバースから右上に移る。

1P目終了点



2P目 W級+ 40m 3B

トポには左上して草付き凹角とあるけど、
直上してガレたハング下のスラブを左に出て、
草付き部からハング下まで。

ガレたハング下のスラブはツルツルで激ワル。
正規ルートのほうがよさげです。


2P目終了点は狭いテラス状

2P目終了点

3P目 X級 40m おれ

残置が目立つハング下を右に出て、
直上ルートが目に留まるまでトラバース。
草付きを避けながらフェースを気持ち右に直上して、
大き目の草付を左から回り込むとテラス。

こんな感じだと足らないかもって不安になるくらい、
意外にランナーがとれる。
登攀的には出だしからのトラバース部分が核心のX級で、
後半はルーファイが求められるX級かな。

トラバースが終わって多少安定した場所から振り返る。

このフェースを気持ち右〜直上
カチも沢山あるし、フリクションも申し分なし。

ようやく拇指丘と右手ガバで一休み(笑

見上げるとこんなカンジ
テラスは上の草付きの裏にあります。
3P目終了点

この草付きがなければ直上してテラスまで入れる、かな。

4P目 X-級 40m 3B

テラスから左に出て浅いルンゼ状からカンテに移り、
傾斜のある草付きフェースを左上気味に岩棚状のテラスまで。

カンテに移るまでがX級-かな。
カンテからはW級+程度。

最初、左に出てから..

頭上の直壁に残置が見えたので直上していったけど、
悪すぎて帰ってきた(笑

今度は左にバンド状をトラバースして
カンテの向こうに消えていったがまた戻ってきた。

フォロアーで辿ったけどバンド状って云っても
バンドじゃなくてかなり厳しい。
グレード的にはX級+ほどあるんじゃないか?
30分ほど右往左往して相当疲れたらしい。

結局、カンテ右フェースの真新しいリングに掛けて
カンテ伝いに抜けていった。
これが正解!




草付きフェースの途中。


4P目終了点は岩棚状のテラスになってます。

4P目終了点
ここはハンガー一枚あり(笑

5P目 X級 50m おれ

浅い凹状の右縁から凹状中央に戻り、次第に傾斜と草付き部が増すフェースを直上して、5P目の終了点と思わしき新しいリングボルトを越えてから草付を左にトラバースし南稜馬の背に合流して終了。

出だしの凹角は意外にムズイです。右縁に残置があります。
草付きフェースは気持ち的にX級-(笑



凹状中央に戻って一枚。

上部の草付きフェースは草付を根こそぎ抱え込むような、
泥臭い登攀になりました。

残置のみだと相当ランナウトしますが、
潅木でランナーとれます。


馬の背がスグ横なんだけど、なかなかトラバースできませんでした。
3B曰く、「簡単そうなバンドがあったじゃん」

後半は、岩4割、草6割(涙

ランナウトしてるし、草付きは岩に乗ってるだけって
カンジなので気が抜けません。

馬背の合流直前は草付を掴みながら、
なんとかに馬の背にトラバースしました(汗

南稜フランケ終了点
(南稜馬の背の中間部)


馬の背を1P10mほど登って懸垂下降



毎度の事ながら、お疲れ様でした。


また登りたいですね。
今度は3時間30分ほどあれば抜けられそう (たぶん

観光客に囲まれて、質問攻めに合いました。

「どこから来たんですか?」
「あそこ登ってきたんですか?」
「上まで行って来たんですか?」
などなど(笑