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　医療関係の各位様には、常日頃ご高配を賜りありがとうございます。同業異職にあたり格段の不自由さと知的対応の不便さをお持ちの事と存じます。
　「正しい」ものの診方や価値判断はそのものの学習習熟度により変化するように思います。深かればそれなりに複雑で言葉を選ばなければならないことが多いことと思います。人をきずつけることは簡単です。しかし、人を理解する事はとても難しい事と思います。
　高度に開かれた感性と知的な理性でご検算下されば鍼灸師としてこの上ない喜びです。下剋上はありません。健やかにそしてたくましく育つ医師の心配りにとても満足しております。今後とも常識のお殿様でいていただきたくご祈念申し上げます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（文責　髙橋　進）

　「アイロニー」と言う言葉がございます。もともと「空とぼけること、しらばくれること」を意味するギリシャ語のエイローネイアに由来する言葉です。ソクラテスが使用したことで有名になった言葉です。
　彼は知者を自認するソフィストら論敵を打ち破るために、無知を粧って彼らと問答を重ね、教えを乞うふりをしながら相手を問い詰めていき、ついには相手の知識が見せかけのものでしかないことを悟らせた。これは、直接に真理を教えるのではなく、むしろ真理の発見に不可欠な無知から知へ人々を導く皮肉な反語法です。
　近代になるとロマン主義者のシュレーゲルやティークらに継承され、いかなる法や規範に拘束されることなく、真実を貫く事の重要さを教えているようです。しかし、実存の世界では「苦悩」を背景に真実の追究がいかに「可能」かが、美的な論理と実存人間社会との矛盾の間で格闘する我に戸惑う「感覚的」生活です。アメリカのテレビドラマの「刑事コロンボ」も広壮として現代ソフィスト達を追い詰める哲学ドラマにも映りました。「医学ドラマ」はまだつくられておりません。
　私達鍼灸師は、東洋医学という壮大な医学的思想下でその解明と日々の臨床にあけくれる毎日です。東洋医学に対するアイロニーはもっておりません。しかし奥深く解明の志操を持つものの東洋医学の「医と意」の広さに圧倒されるばかりです。
　鍼灸師である私達が「農機具や種まき」の事について語るのであれば、農家の方は鍼灸師として「農機具や種まき」の浅い考えに違っていてもきっと何の攻撃も恫喝もありません。それは、鍼灸師は「農業形態」に関して素人だから何ら彼らにとっての不利益が発生しないからです。鍼灸師でなく、農協職員だったら事や事態が一変いたします。専門用語が飛び交い、細部にいたる難しい会話になることと思います。
　このように、現代社会では、専門分化が進み職種やジャンル分けされた企画社会が形成されております。鍼灸学になじまない医科であれば、鍼灸学の学習の後、「鍼灸が効かない」と言ってください。それまでは効聞かないことに致します。鍼灸師としてかんばっている我々に対する「無情の洗礼」なのかな。
（文責　高橋　進）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　一般的には鍼灸エリアの仕事は半病人、半健康人程度の患者さまの治療処置を行うエリアと勘違いなさっている方も多く、結果を残すはり治療もあると言う事にお気づきになられた方も少なくございません。
　子宝はりの日本ハリセンターでも患者様を一人でも多く妊娠していただくことが「鍼灸の風潮」を払拭する土台になります。数万人に結果を出したとしても、医師の一言「鍼は効かない!!」なんていう非医学的な無責任発言で我々が積み重ねてきた結果は０になってしまう世の中です。
　信頼の基に築かれた「もの」もはかない火の粉となってしまいます。医師の言葉の重さや重圧に戸惑うこともございます。全能の神ではありません。ジャンルが違えばただの凡人です。
　慈悲の心を育み、足元をみてしっかりと自分で歩くリハビリにお取り組みいただければご幸甚です。私を含めて。
（文責　高橋　進）