to my students
「学生たちに」
2015年09月24日
2015年09月24日, 新安保法案が可決した直後にあたる学期開始日に, 授業後の自由時間に自分の学生の一部に向けて話したミニ・スピーチです.
授業後の, みなさんの貴重な時間を2, 3分だけください. 忙しい人, このような話が不快だという人は, どうぞ退室してください.
私は「慶應義塾有志の会」のメンバーです. この会は, 先日可決された新安保法制に反対する教員, 学生, 塾員の集まりです. 9月16日の時点で700名の賛同者がいます.
今日のお話は, 皆さんも賛同者になってください, というお願いではありません. 新安保法制については賛否があることでしょう. ぜひ自分で考え, 友だちとも議論してください. 皆さんが態度を決める前に, なぜ私がこのような運動に加わっているのかをご説明したいのです.
もちろん憲法違反だからというのが最大の理由なのですが, 今日は, 私が皆さんと共有しているこの教育の場との関わりで, 一言だけお伝えしたいと思います.
私たち一部の教員が本当に怒っているのは, とりわけ, 言葉をきちんと使うということがこれほど虐げられ, 無視されたことはないからです. 中学生でもわかる, 言葉への無理強い, というより言葉の無視が横行しました. そして, どのようなまっとうな反論を展開したところで, その先に待っていたのはせせら笑いと言い逃れでした.
言葉の無視が事実上の力をもつ, ということが, メディアを通じて私たちの目の前に示されてしまった.
皆さんもご覧になったでしょう. 彼らはさぞスカッとしたことでしょうが, 私はこれは教育的に言っても致命的な危機だと思っています.
もう言葉にまっとうな力を見いだせないのならば, 皆さんはなぜ大学でまだ語学を, 総合教育科目を,
そして専門科目を学ばなければならないのでしょうか. そして, なぜ私たちは皆さんにそんなものを教えなければならないのでしょうか. もうその必要はなくなってしまう.
不当なしかたで力を獲得してしまった人たちにただ従わなければならないとすれば, あるいはまた, その人たちにただ取り入ろうとするのであれば, もう, 大学レヴェルの教養をきちんと身に着ける必要などありません.
私たちが言いたいのは,「私たちは言葉をないがしろにするそのような人たちと一緒ではない. 私たちは彼らに真っ正面から抵抗して, 言葉の力を護る. それによって, これまで学生の皆さんと丁寧に作りあげてきた教育の場, 教養の場を護る」ということです.
以上です. ありがとうございました. 次回の授業でお会いしましょう.