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のぞみのかたち
「嶺」第22号


●水底から
            ―ナルシス頌


ふかい淵から
わたしはあなたを呼ぶ
あなたの身振りにならい
渾身の力をこめて呼びかえす
あなたはわたしにまさって
ほんとうのわたしにいますから
いのちを捧げてかえりみぬほどに
わたしをあなたとしてくださるから
いくら身を装いこころを飾っても
あなたのまえに立ちえないわたしを
もはや真向かいを憚ったりしない
あなたから眼を逸らしたりもしない
あなたの眼差しは授けてくださる
わたしがわたしとしてなおここで
みずからを慈しんでゆくすべを

花々がいっせいに萎れ悲しむ
それは風に嬲られるからではない
もはやあなたの眼差しをどこにも
世界の片隅にも見ることがないから
けれどわたしは嘆きつづけてはいない
あなたの慈しみに囲まれているから
わたしの肩越しにあなたを見あげる
たくさんのまなざしを感じるとき
わたしの眼もふたたびひらかれ
祈るもののように手は伸べられる
ながれの底ふかく身をしずめ
水草のように手を伸べつつ
待ちのぞんで已まない
わたしはあなたを呼ぶ
ふかい淵から




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