県立鎌倉高校サッカー部


<コラム>

W杯 日本VSオランダ(0-1)』

 

日本が主体的に相手の攻撃をコントロールし、もう一息のところまで持っていけたという意味で良いゲームだった。
前回03で負けたゲームよりも、守備の面で行くところと待つところがコントロールされ、足を使いすぎず運動量を抑えることができていた。


オランダはワイドにボールを動かし、強引な縦パスはあまり入れてこない。プレスがかかると安全にボールを下げて、距離をとりながら、ボールを保持する。

ボールを動かし、仕掛けは最後にボールの渡されるワイドの選手の突破力に依存する。突破できなければ手詰まり感が出てくる。


オランダサッカーはボールがつながり美しく見えるが勝負はモノにできない印象がある。

スペインのそれとは趣が違う。スペインも人とボールを広く動かすが、次の仕掛けを意識したボールの動かし方をしている。

パスを仕掛け”と“つなぎ”に分けるすると、オランダは安全な“つなぎ”を選択するのがスペインより早い。バックパスするだろうな、というタイミングで予想通り下げてくる。

ほとんどのオランダの選手はそうなのだが、そこに変化をつけられる選手、それがスナイデル。この才能がいることで、オランダは優勝候補となっている。スナイデルは、どこに止めて、どのタイミングやスピードでどの方向にパスをすると味方を優位にさせられるか、一瞬でヒラメいて、そのイメージをハイレベルで表現できる特別な選手。

今回の失点は、変化という意味ではないが、ゴールの場面でスナイデルの判断の良さが光ったので、プレイバックしてみる。

センタリングの上がった時、スナイデルは左サイドにいて、スナイデルをマークすべき長谷部・阿部ともに最終ラインに吸収されていた。
スナイデルは自分の周りに大きなスペースがありかつフリーなことを理解していた。ゴール前へ詰めなくても、もしボールがこぼれれば、こぼれると予測されるスペースに対し、全て自分で拾えると判断した。だからわざとゆっくり動いて、こぼれるのを待ったわけだ。
おそらく普通の選手なら前に詰めてセカンドボールを拾いに行ってしまっただろう。
前に詰めればあんなにいい体勢では、イチ、ニの、サン!で打てなかった。もう少し詰まった状態になり、蹴り方も変わっていた。
いい状態で打てる環境を作ったのはスナイデルのボールのない時の判断力。
ボールがない時にどんな判断をしているか?何を考えているか?

シュートを評価するよりその前の判断を評価しなければ、日本は変わっていかないだろう。日本人だって、シュート場面だけ見れば、あの勢いでフリーだったら、全く同じとはいえないが同様のシュートが打てるのでは。

すげぇシュートだったなぁ。ボールがブレているからGKはしょうがないよな、では進歩がない。

ボールがこぼれたことは、偶然な部分もあったが、その中で確率の高い判断をして、あの場面を作ったスナイデルの判断を学ぶべきだろう。


日本の最後の攻撃について。日本の攻撃ムードを作ったのは、オランダベンチの狙いを見事に潰し、グランドに立つオランダの選手達を迷わせた長友の守備だろう。
あの場面で、交代出場してきた選手を完封できたことは今までの日本に比較すると成長したところだろう(長友という存在を作った日本サッカー)。あそこでオランダのアウトサイドに突破されていたら、突破されないまでもコーナーキックまで持っていかれたら、オランダはそこをついてきたし、日本の攻撃陣は守備に追われ高い位置を取れなかっただろう。

逆にオランダにしてみれば、左サイドを使おうとしたが、使えなくなったことで(攻め手を失ったことで)足が止まり気味になった。


長友の守備が生んだ日本の攻撃で、世界のトップレベルを初めて慌てさせた攻撃だったように思う。
決してオランダ選手が余裕を持って対応していたのではなく、足が止まっていると感じた。
相手の攻撃を抑えられれば、日本はあれぐらいの攻撃はできるということ。

反面、あれぐらいの攻撃しかできず、最後のシュート、ラストパスといった決定的な仕事をすべき人ができないのも事実として残った。


いずれにしても、長友の守備が作った日本の攻撃のリズムを見てみると、やはりサッカーは守備だなと考えさせられたゲームにだった。


そして、1点気になること-森本の使い方-がある。岡田監督は森本をデンマーク戦のジョーカーとしてとっておいたのか。。
あの場面でオランダに引き分けでも負けでも、デンマーク戦では引き分けか勝ちで決勝トーナメントに進出でき、負けたら決勝トーナメント進出はないという想定をしていた?!

負けの許されない最終戦に森本をとっておき、オランダ戦では手の内を見せずにデンマークに森本を意識させない、さらには試合に出さないことで森本のエネルギーをフル充電する。高さはあるが速さへの対応に難があるデンマークDF陣には、森本のプレースタイルがピッタリ合う。
表向きは“目の前の戦いに全力を尽くす”なんて言っているが、勝負のデンマーク戦には準備周到とみた。

考えすぎかもしれないが、森本の使い方も含め明日のゲームが楽しみだ。