県立鎌倉高校サッカー部


<コラム>

『日本化への道程』

 

オシム監督が日本サッカーの日本化を唱え、その後、昨年12月に岡田監督にバトンが渡った。その中で、一番楽しみなことは、前ヴァンフォーレ甲府の大木監督がコーチに入ったことだ。

最近のJリーグで特徴的なサッカーをしていたのが、ジェフと甲府。ジェフはオシム監督が日本人の特徴を生かしたサッカーを進め、その後、ヴァンフォーレ甲府で大木監督が<オシムサッカー+狭いエリアを突破していくサッカー>を志向していたように思う。それは、J2から上がってきた甲府が、個の能力が多少低くても、狭いエリアで勝負すれば能力の差は大きく出ず、互角以上の戦いを展開したサッカー。残念ながら、J2に落ちてしまったが・・。ただ、このような流れがそのまま日本化の方向性につながっている。

岡田監督のいう“接近・展開・連続”は、<展開・連続(オシムサッカー)+接近(大木サッカー)>

展開・連続をやっていくことは、岡田監督も得意とするところで方向性としては容易に想定できた。ただ、“接近”を加えたことは、日本サッカーをグイッと方向づける大きなチャレンジ。甲府を退いた大木監督をコーチに迎えいれたのは、頭の中では既定路線だったろう。

 

アタッキングゾーンでの日本の問題点は、個の能力で勝てない/サイドからのクロスの精度が低い等、が言われ続けているが、今まではそこの能力を高めないと世界と戦えないという議論を進めてきたように思う(もちろん今後も課題に取り組むのだろうが・・)。発想の転換で、その土俵で勝負するのではなく、他の方法で勝負していこうということ。

ミドルゾーンまでの攻撃や守備全般については、ある程度の力を発揮できる日本。アタッキングゾーンで、“接近”がより生きてくる。ドリブラーが1人でゴール前を切り裂くのではなく、34人でユニットを形成しワンタッチパスで突破していく。さらに、そのユニットの中にドリブルのうまい選手がいれば、そのユニットのまま、ドリブルで仕掛ける。狭いエリアで味方がサポートしてくれるから、相手を騙しやすい。また、単なるサイドチェンジを良しとせず、狭いエリアをユニットで仕掛けておいて、ユニットの脇のゾーンを他の選手が飛び越えていく。そこがフリーならば、そこへのパスをして結果としてサイドチェンジになるというイメージだろう。

日本人の特徴である“組織的”“勤勉さ”よく走る“そして”高いアジリティ“。狭いエリアで勝負すれば、”高いアジリティ“が生き、フィジカルの高い海外の選手にも同等の勝負ができる。

“接近”という言葉で、“高いアジリティ”をアタッキングゾーンで生かすというピースが日本のサッカーに組み込まれるのか。

 

目指す方向はとてもおもしろい。近々に迫ったアジア予選では、違う戦い方も出てくるだろう。ただ、世界の一流国と比して日本化するという意味では、とても面白いチャレンジだ。

育成年代の指導者は、10年後のサッカーがどうなっているかを予測して指導していくべきだ、と何かの本で見たことがある。10年後に活躍できる選手を育てるということ。10年後はどのように日本化しているのか。