県立鎌倉高校サッカー部
<コラム> 『新人戦シード決め VS大清水』 夏のU-17で鎌高が5-0で勝ったことが、大きな差のない両選手達の気持ちにどう影響し、ゲームがどのように動いていくか、興味深いゲームになるはずだった。 しかし、残念ながら大清水は修学旅行から帰ってきた直後で、明らかにコンディションが悪く走れていなかった。結果としては、そんな相手にもしっかりプレーして、キッチリ勝ち鎌高の選手達の成長を示したという形となった。 後半の1点目には、非常に重要なプレーが3つ詰まっていた。 “味方の動きを利用したドリブル”“スペースを突くドリブル”“シュートコースを作るドリブル” サッカーは1対1の局面の連続であるが、いわゆる練習でやる1対1の局面は少ない。必ずと言っていいほど、試合の1対1は周りにいる味方や相手の位置や動きに影響される。具体的には、1対1で相手と向き合った時、味方が縦に走ったり、オーバーラップしたり、横にサポートにきたり、はたまた相手がカバーに来たりと。 “味方の動きを利用したドリブル”ってのは、パスもできるドリブルもできる体勢を作って、パスができるタイミングで相手DFがどう対応するかよ-く見ること。その逆を突けばいい。いまパスなのか、ドリブルなのか?判断材料は、対応するDFそして周りの状況にあり、結果として、その局面を打開し、次の局面を優位に進められるようパスかドリブルを選択していく。 得点の場面では、ペナルティエリア外少し左を鎌高のFWがドリブルした時、さらに左サイドの選手が動き出す。その動きに合わせ、視線を左にやり対応するDFの動きを見て、逆を突いた。決して、すごいスピードで抜くことが必要ではない。味方の動きを使い、相手を惑わし逆を取る。相手DFの動きをよく見て、パスなのかドリブルなのか判断を変えられることが大事。 “スペースを突くドリブル” 相手をかわした後、前のスペースを見つけドリブルで突いた。スペースへドリブルすると、近くにいる相手DFは自分のマークをルーズにしながら対応せざるを得ない。対応することよって、さらにスペースが生まれてくる。そこを確実に突いていく。 例えば、サイドバックとセンターバックの間にあるスペース。ダブルボランチの間にできるスペース。スペースを突くことで、そのスペースに最も近い選手を対応せざるをえない状況にして、味方が動く時間とスペースを作る。そこにパスを出し、優位な状況を作っていく。この得点では、相手をおびき寄せて、ジャストタイミングで味方にはたいて、ゴールをアシストした。 “スペースを突くドリブル”というのは相手に質問するということ。あなたはこのドリブルに対し、どう動きますか?と。サイドバックとセンターバックの間、ボランチの両横等々。 スペースは色んなところにできている。 “シュートコースを作るドリブル” ボールを受けた選手は、相手が前にいたがゴールを明確にイメージできていた。相手DFがシュートコースを消せないところにボールを置いて、確実にゴール右サイドに流しこんだ。ゴール前ではシュートコースを空けてシュートを打ちにいくことがとても大切。相手は必ずバランスを崩して対応してくる。コースがあれば打てばいいし、消されそうなら切り返せばいい。キックフェイントを仕掛けるのではなく、本気でシュートを打ちにいって、やっぱや-めたと切り返す。“結果として”キックフェイントになっている。変なフェイントなんかより、よっぽど効果がある。 右利きの選手の右足斜め前数十センチ。そこにボールを置いて、ゴールの右サイドを狙っていくということは、相手に対し主導権を握っていくということ。 このゴールまでの一連のプレーは、ゴールという最終結果を得るために、相手を崩していくためのエッセンスの詰まった見事なゴールだった。 前半は、ただ一生懸命プレーしているように見えた。一生懸命なプレーには、一生懸命な守備にはまって守られてしまう。だからといって、ヒールキックやノールックパスをして相手をビックリさせることが必要なわけではない。必要なのは“理にかなったプレー”。相手の動きをよく見て、動けないところ、届かないところ、対応しても間に合わないところを確実に突いていくこと。それには相手をよく見ること。相手のモーションや体勢。正しいプレーの選択の答えはそこにある。
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