県立鎌倉高校サッカー部
<コラム> 『予測すること〜位置取り〜』 サッカーをやっていて、予測しろ!なんて言われたことが誰しもあると思う。 予測って何だ? サッカーの試合で、自分がボールをもっていない時間は9割ある。ゆえに、ボールのない時に何を考え、予測し続けどう動いていくか?相手より先に動いていることがすごく大事。 ボールが来た時には、すでに勝負がついている。 ボールのない時に何を考えているか?これが何よりに大事だ。ボールを持った時に何ができるか?も大事ではあるが、小野選手のようにボールを扱えといっても、これは難しい。もって生まれた才能もあるし、小学生年代からの積み重ねもある。それに、ヨーロッパの選手達は、そこまでボール技術がなくても、よっぽど優れた選手はたくさんいる。 大切なのは、ボールのない時に、相手よりも速く動き出して、有利な状況でサッカーすること。予測をベースにした頭の回転の速さが勝負になる。 ボールのない時に何をしているか?その動きを見れば、その選手が何を考えているのかすぐにわかってしまう。監督もコーチもそこを見ている。この選手は何を考えてどのポジションを取っているのか?と。 それでは、予測ってどういうことなのか?具体的に考えていこう。 はじめに、ボールを持っていない時の守備の予測と位置取りについて・・。 誰にもあるような日常生活のできごとを例にとってみる。 君は、自転車に乗っていて練習時間に遅れそうで急いでいる。50メートル先に信号があり、どうしても赤で止まらずに渡りたい。何を考えるだろう。まず信号を“見て”、今の状況を確認するだろう。いまは青だ。このスピードで渡る時に黄色→赤になってしまうと思えば、スピードを上げるよね。この行動は、信号を“見て”予測して先に動いている。青のうちに、黄色に変わっても渡れる“位置取り”をしようとしているわけだ。ようは、黄色になってからスピードを上げていては間にあわない。青の時に黄色になっても渡れる“位置取り”をすること。これは、“見て”予測して先に動くこと。 さあ、信号が近づいてきた。歩道の信号がチカチカと点滅しはじめた。この時点で歩道の信号を“見て”、遅れていると思えば、さらに、スピードを上げて渡れる“位置取り”をする。その渡れる距離感を考えているはずだ。周りを“見ながら”情報を集め予測している。 もう信号は目の前だ。渡ろうとする。前から、ウインカーを出して右折の車が来ているか“見る”、自分の横または後にいる車が、左折のウインカーを出していないか“首を振って見る”。 “見る”ことで状況を把握し、次を予測しているわけだ。 信号を渡るためには、青の時に何をしているか?その位置取りが大事になってくる。 黄色になってから、ハッとして慌てて動いても、赤で止まるしかない。こんなこと自転車に乗っていれば誰でもやっているはずだよな。 ボールのない時の守備も似ている。 例えば、青の状態は、 ◎味方がボールを持っている状態 ◎相手がまだボールをコントロール出来ていない状態 ◎遠くで競り合いをしている状態(直接はボールが飛んでこない距離) ◎相手ボールのスローインで出たボールを相手が取りにいっている状態 ◎ゴールキックで相手のキーパーがボールを置くまでの状態 等々 この青の時点で“見て”予測して、いい“位置取り”を取らなければいけない。 歩道の信号がチカチカと点滅している状態は、 相手の選手が自分の近くにいる選手とアイコンタクトし、パスを出そうという動作に入った状態。 これを”見て”さらに細かい”位置取り”を修正しなければならない。 青の時に、すでに勝負はついている。 黄色の状態はとても短く、この時に準備していたのではもう遅い。 ◎自分の近くにいる相手の選手に向かってパスが出され、ボールがコロコロと転がって いる状態 ◎味方がドリブルして相手に寄せられ、こぼれ球になりそうな状態 ◎相手がコントロールして、クリアボールが飛んできている状態 ◎相手がゴールキックを蹴る、スローインを投げる状態。 黄色になってから、急いでスピードを上げても信号は渡れないわな。サッカーなら、ボールは取れないよな。 状況を“よーーく見て”青の時にいい“位置取り”をすることが全て。 当然、サッカーは信号を渡ることより複雑。ボールがひと転がりすれば状況は変わるから、“見て”予測し続けなきゃならない。 こんなの当たり前と思う人もいるかもしれないが、その通りだ。当たり前なんだ。 ただ、このことを“速く正確に”できるのがいい選手。世界のトップレベルの選手達は、0.01秒でもより速く、より正確にやろうとしているだけなんだな。 だから、俺はそんなことはできているよ、なんてのは、大きな勘違い。このことに到達点はないわけ。 ボールのない時に“見て”予測して“より速く”動くことって、サッカーそのものなんだよね。 高いレベルにいって、初めて、“あっ!相手のほうが速い”と試合で気がついても、 これもまた、すでに勝負はついている。 こう考えると、意識次第で、自転車に乗っていてもサッカーの練習ってできるんだよな。 ただし、交通ルールは守ってね・・・。
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