県立鎌倉高校サッカー部
<コラム> 『選手権2回戦VS多摩(3-2)』 今日のゲームは、本当は負けてしまえばよかった。 勝ってしまったことで、忘れてしまうことがたくさんある。“負けるが勝ち”という言葉があるが、今回は一時的に勝ってしまったから、ここでしっかり学習しておかないと、最終的に負ける時がきてしまう。 勝った時こそしっかりと学習して欲しい。 今日のゲームは、前半の早い時間に2-0になり、前半のうちに2-2に追いつかれた。後半もち直して、3-2で勝つことができた。 サッカーにおいて、 ■“1-0”→リードしたチームは、失点すると同点にされてしまうので緊張感を保つことができる。リードされたチームは、多少前がかりなるが大きな心理的な変化はない。 ■2-0(特に前半で2-0)→リードしたチームは2つのチームに分かれる。 @必死で3点目を取りにいき勝負を決めてしまうチーム A2点目の安心感から、気が緩みミスを犯して失点するチーム リードされたチームは、心理的に攻めの意識が強くなり、前がかりになる。 以前にも説明したが“2点差の妙”となる。 リードしたチームが3点目を取ると、ほとんどのチームは意気消沈する。あせりから選手が自分勝手なプレーをすることで組織が崩れていき、9割方そのままゲームは終わる。ただ、1点取り返し2-1となると、負けているチームは一気に勢いを盛り返し、さらに積極性が出てくる。リードしているチームは、失点のショックと同点にされる恐怖からパニックになり、さらに状況は悪化する。そして、さらに1点が入り2-2となることで、追いついたチームが心理的に一気に優位に立つ。同点にされたチームは、さらにパニックになり、こんなはずじゃなかったと個々の選手に迷いがうまれてくる、またあせりから勝手なプレーやミスを繰り返す。そして、往々にして追いついたチームがもう1点を取って勝利することが多い。心理的なものがプレーに大きく影響してくるのがサッカーだ。 今日は、まさにそんな展開だった。特に前半2-0でリードすることは非常に危険だ。1点を取って喜ぶのはいい。自然とその後も集中できるものだ。でも2点目を取ったら、喜んでも次のことを考えながら、声を出し合いお互いの心を引き締め直すこと。そして、相手の倍の集中力を持って、ひたむきに必死に3点目を取りに行かなければならない。2点を取って、“この試合もらった!”とか“俺たちは強いぜ”なんて考えるのは、大きな勘違いなのだ。これが出来ないチームはいつか“必ず”痛い目に遭う。必ず。サッカーはそういうものだから。 また、たとえ1点返されたとしても、同じように声を掛け合いお互いを鼓舞していくことが必要だ。誰かれでなくみんなですること。下を向かず、気持ちを切り替えること。 この試合は、負ければよかったのに勝ってしまったので、本当の意味で苦い思い出として、選手の心には残らない。 でも痛い目に遭う手前のギリギリの体験をしたはずだ。だから学習して欲しい。勝ったことで忘れてはいけない。 2-0になったらどうすればいいか? 失点してしまったらどうすればいいか? 大事なことは、試合中に勝っていることではなく、終了のホイッスルが鳴った時に勝っていることだ。 そういう意味では、同点にされ苦しい状況の中、後半に気持ちを入れ替えて勝ちきったことも、それはそれでいい経験であった。
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