県立鎌倉高校サッカー部


<コラム>

『湘南地区の高校サッカーとこれからの鎌高サッカー』

 

私が高校生の頃(もう十数年経つが・・)に比べると、最近の湘南地区の高校は低迷している。何でだろうか?なんてことを考えたりしながら、十数年ぶりに高校生の試合を見て歩いた。何試合か見た印象は、“ショートパスをつなごうとするチームが多いこと”“選手個人のボール扱いは上手くなっているが全体的に目立つ選手がいないこと”の2つが気になった。

Jリーグがスタートし十数年経ち、日本がW杯に出場するようになり、サッカー人気そして、底辺の拡大している中、湘南地区の各県立高校は、昔に比べると苦戦を強いられている。かつて、県内のベスト8クラスには、湘南地区の多くの高校の名があった。鎌倉、藤沢西、七里ガ浜、湘南、湘南台、北陵、日大藤沢・・・。現在は、日大藤沢、大清水が健闘している程度だ。

底辺が広がり地域格差がなくなってきて、全体的なレベル(ボール技術)もあがり、かつてのサッカーの盛んな湘南地区の優位性がなくなってきているのか・・?

問題の一つには、県立高校のどこにでもある指導者の問題である。県立高校では教員が監督となっていることがほとんどであり、制度的に教員には異動がつきものなので、数年続く伝統も先細りしてしまう傾向がある。熱心な指導者(教員)が増えてきていて、各高校の格差がなくなっていることもある。ただし、少子化の影響で生徒が減少し、教員の採用が少なくなり、若い力が入らない問題もある。ちなみに我々の監督である小柴先生は、赴任して2年目を迎えるということで、間違いなくこれから鎌高に新たな伝統を作っていくだろう。かつての鎌高には名監督がいた。数人の有力な選手を中心にチームをまとめあげ、神奈川県代表の切符を手にし、そして有望な中学生が自然と集まってくるという善循環を生み出し、鎌高をサッカー伝統校にしたてあげた。私もその憧れを持って、全国大会で活躍する自分を夢みて、鎌高の門を叩いたひとりである。

また、Jユースの存在も大きな影響がある。神奈川県は、4つのものJチームがあり、

トッププロを目指した一貫教育、レベルの高い競争環境、Jを経験した優秀な指導者や施設面といった魅力がある。湘南地区は、横浜方面にマリノス、フロンターレ、横浜FC、小田原方面にベルマーレと、通いやすい立地なため、有望な選手の多くは、Jユースを選択しているのであろう。(私の単純な予測だが・・・)

もちろん、“高校サッカー”を選択する選手もたくさんいる。また、Jユースに行けなかった選手が“高校サッカー”に進むこともあるだろう。また、単に高校の部活動として、サッカー部に入部する選手もいるだろう。いずれにしても、成長の差の激しい中学年代でサッカー選手の質なんて見極められるわけもなく(中村俊輔選手がマリノスユースに入れなかったことは有名な話)、全ての選手に色んな可能性が広がっている。Jユースに入れなかったからといって、俺はダメなのかなんて思う必要は全くない。地区のトレセンに選ばれていないからといって、卑屈になる必要も全くない。実際、私の経験を言うと、中学時代では、3年生になるまで試合に出ることができなかったし、地域の選抜チームに選ばれてもいなかった。高校でも湘南地区の選抜には入っていたが、レギュラーで活躍したわけでもない。でも大学では、いつの間にか今でいうU-18日本代表レベルで高校選手権で活躍するような有名な選手達と肩を並べ、対等に戦いながら成長することで、次のステージに進んでいった。選手がいつどのように育っていくのか、どんな可能性を持っているかなんて誰にもわからないのだ。選手は今の自分を高めていくことだけを考えて欲しい。例え、現時点で少しうまいなんて言われている選手や選抜チームに選ばれている選手も自分を高めようという気持ちが薄れれば、あっという間に他の選手に抜かれていく。たくさんの選手を見てきたが、そういうものなんだ。

 最近の湘南地区の低迷を考えると、“サッカーをするなら、この学校でやりたい”という高校がなく、“高校を卒業してJへ行きたい(もちろん大学経由もありだが)”という目標や“ちょっとJまでは考えられないけど、全国大会に出てみたい”といった身近な目標を持ちづらいのではないかと思う。

身近な目標として“サッカーをやるなら鎌倉高で”という環境をつくってあげ、そこで意識を高く持ちながらサッカーを続けていくことで個々人の持っている潜在能力が発揮されていくと思う。そして、勝つことを追求しつつ、選手が次のステージに進めるようにサポートしていきたい。その次のステージというのは、Jリーグであり、大学サッカーであり、地域のサッカーであり、少年サッカーのコーチであり、いちサッカーファンであるかもしれない。まだまだ若い中高生は無限の可能性を持っている。“選手を育てること”なんてできないので、選手の“うまくなりたいという心”を育て、可能性を広げてあげたいと思う。