メッセージ  (説教より)
「マタイによる福音書」



「十字架の王」          マタイによる福音書 27章45−56節

 イエスさまが十字架につけられたのは朝9時のことで、午後3時頃息を引き取られました。ここには、イエス様を軽蔑し悪意を持つ人、一連の出来事を見て信仰を告白する者、十字架の証人としての婦人たちが記されています。

 愛を説き、赦しを教え、労わりに満ちたイエス様が「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。(わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか)」と叫ばれたのは、神と人から捨てられた叫びであり、私たちの罪のためでした。
 人は罪を犯します。故意からではなく、弱さやうっかりの場合もありますし、存在そのものからにじみ出てくる場合もあります。罪の社会に生きていますので、自分だけが手を汚さないではすまない場合もあります。イエス様の叫びは、そんな私たちの罪のために神様の怒りを引き受けられた叫びなのです。

 イエス様の誕生のとき、東方の占星術の学者が「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。」とエルサレムを訪問し、十字架の罪状書きには「ユダヤ人の王」と記されています(マタイ福音書27:37)。これは偶然ではありません。今日の箇所は王の即位式の記録なのです。力を以って支配し、人々の好む物を提供する王ではなく、愛と赦しによって支配する王です。存在そのものが罪である私たちがその支配に服し、お従いすることで私を真実に生かす王なのです。