メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」





「ほめたたえよ憐れみの神を」    ルカによる福音書 1章57−80節

 ザカリアはヨハネの誕生を予告されると、「何によって、わたしはそれを知ることができるのでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています。」と戸惑います。それでも、逃げることのできない神様の業にふれ、語れず、沈黙することで神様の業を熟考したのでした。
 沈黙の中で神様への讃美が蓄えられ、ヨハネの誕生と共にほとばしり出たのがザカリアの賛歌「ベネディクトス」です。
 ザカリアの賛歌の中心は「憐れみ」ですヨハネとは「神は憐れみ深い」という意味ですし、ザカリアの賛歌には三度も「憐れみ」の言葉が入っています。

 聖書の「憐れみ」は、力ある者が弱い人に憐憫の情をかけることではありません。元々は「内臓がねじれる」という言い方で、日本語の「心が痛む」「胸が締め付けられる」といった表現と同じです。放蕩に身を持ち崩して尾羽打ち枯らした息子を遠くから認めて、いても立ってもいられず、「憐れに思い、走り寄って首を抱き」(ルカ福音書15:20)という憐れみです。上の者が下の者に憐憫の情を持つことではありません。
 ザカリアはこれがわかりました。ヨハネが先触れをするイエス様によって明らかになった神様の憐れみを感謝し、ほめたたえたのです。

 いつまでも争いを止めず、迷い、失敗をし、病む私たち、私たちは「キリエ(主よ憐れんでください)」と訴えられるので、決して諦めず、投げ出さず、朝の光の中で歩むのです。