メッセージ  (説教より)
「マタイによる福音書」


「避難・殺戮・帰国」
                マタイによる福音書 2章13-23節

 19節以下に「ヘロデが死ぬと、主の天使がエジプトにいるヨセフに夢で現
れて、言った。『起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさ
い。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。』そこで、ヨセフ
は起きて、幼子とその母を連れて、イスラエルの地へ帰って来た」と記され
ています。
 一人の人間がいなくならなければ、事態が動かず、困難な膠着状態が続く
ということは、私たちの現実にもよくあることではないでしょうか。言い換
えれば、問題の真の解決には時間がかかる、いや、人の一生の時間を必要と
する、と言うことではないでしょうか。教会の問題についても、そのような
面があるのではないでしょうか。教会の問題を真に解決するには人の一生が
かかるほどの時間を必要とするといった面が。そのようなことを考える時、
私たちの信仰は「時間の経過に耐える」信仰であることが大切ではないか、
時間の経過と共に色あせ、力を失い、忘れられていく信仰ではなく、時間(歴
史)の経過に耐え、いや、時間の経過と共にますます輝きを増し、いよいよ
真理の力を現わす信仰に生きることが大切なのではないでしょうか。
 「避難・殺戮・帰国」は幼子イエスの辿った現実でした。荒々しい現実で
す。いや、この世の現実そのものです。その中にあって神は、不思議な摂理
の御手をもって幼子イエスの命を守ってくださったのです。この命こそ、世
にあって、闇に輝くまことの光としての御子キリストの命です。この命の中
に、まことの愛、限りない罪の赦し、真の清さがあります。この命に深く与
って生きるのです。そこに、世にあって色あせることのない、真に力を現わ
す信仰の生活があるのです。