メッセージ　　(説教より） 「マタイによる福音書」

「世界の王キリストの誕生」　　　　マタイによる福音書　２章１−12節

　「イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て」（１節）と記されています。「そのとき」とは、原語では「見よ」という言葉です。「驚き」あるいは「注目」の意味を込めて使われています。
　ユダヤのベツレヘムで「ユダヤ人の王」（2節）としてお生まれになった方を拝みに来たのは、なんと、ユダヤの人々ではなく、「東方から」の占星術の学者たちであった、というのです。つまり、肝心の神の民であるユダヤの人々は、自分たちの中に与えられたメシア誕生の事実から全く「締め出されて」いた、ということです。このことを指摘することによって、マタイ福音書は「ユダヤ人の王」としてお生まれになったメシアは、初めから「全世界の王」としてお生まれになった、ということを言わんとしているのです。
　「東方」とは、神の民イスラエルにとっての東方で、異邦の国々のことです。「占星術の学者」とは、言い換えれば、真理探究者のことであり、人間の本当の救いを求める求道者のことです。彼らを導いた「星」（２節）とは、この世においてすべての人を主キリストへと導く神の「摂理」のことと考えることができます。私たちが本当の救いを求めて人生の旅路を歩む時、私たちは、あらゆる事柄を通して、自ずから主キリストへと導かれるのです。そして、キリストを「探し当て」た時、東方の博士たちが「ひれ伏して幼子を拝み」（11節）宝物を献げたように、私たちもまた、深い喜びと感謝のうちにキリストの御前にひれ伏し、キリストの清き命に生かされる者となるのです。