メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」






「香油を注ぐ」    マルコ福音書14章1−9節

 一人の女性が「純粋で非常に高価なナルドの香油」(3節)を主イエスの頭に注ぎかけた時、主イエスは「はっきり言っておく。世界中どこでも、福音が宣べ伝えられる所では、この人のしたことも記念として語り伝えられるだろう」(9節)と言って、この女性のしたことを高く「評価」されました。
 この女性は、主イエスが十字架にかかって死なれることの本当の意味を知っていたのではないでしょうか。主イエスが十字架にかかって死んでくださらなければ、すべての人間の、いや、自分自身の罪が神の御前に赦され取り除かれることが決してできないことを、知っていたのではないでしょうか。
 主イエスの十字架は悲しいし、ないほうがいい。しかし、主イエスの十字架の死がなければ、自分の罪は赦されないし、そもそも主が与えてくださる復活の清き命に与って生きることができない。主イエスの十字架は主イエスご自身の意志であり、天の父なる神の御心である。女性は主イエスのお言葉を全身で信頼をもって聞く間に、そのことを理解したのではないでしょうか。そのことを理解した時、十字架にかかって死のうとしておられる主イエスに対して女性ができることは、自分が大切に蓄えてきた「純粋で高価な香油」をすべて主イエスに注ぎかけて「埋葬の準備をする」(8節)以外になかったのです。「香油を注ぐ」ことは、女性にとって自分のすべてを主に献げることを意味したのです。主の十字架の死に感謝し、主が備えてくださる復活の清き命に与って生かされることが、主の十字架に応えるただ一つの道である、と信じたのです。その女性の献身を主イエスは深く喜ばれたのです。