メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」






「群集がかわいそうだ」        マルコによる福音書 8章1−10節

 「群集がかわいそうだ。もう三日もわたしと一緒にいるのに、食べ物がない。」(2節)と主イエスは言われました。四千人以上もの人々(9節)が「食べ物がない」状態で、「三日も」主イエスと共にあるということ自体が、大変異常なことではないでしょうか。どうしてそのようなことが可能であったのでしょうか。それは、「力ある」主イエスに対する「盲目的な」信頼が人々の心にあったからではないでしょうか。この方と一緒にいれば安心である、という盲目的な信頼があったのです。
 しかし、その人々も、やがて主イエスが捕らえられ、十字架につけられる時には、イスラエルの指導者たちの煽動のうちに、主イエスの「弱さ」「貧しさ」に惑わされて、「十字架につけろ」と叫ぶようになるのです。
 主イエスに対する人々の信頼は、まだ本当のものではなかったのです。主イエスの十字架と復活の出来事を踏まえた、罪の赦しと救いに基づく信頼ではなかったのです。主イエスは、そういう群集を見て「かわいそうだ」と言われたのではないでしょうか。本当の救いを求めて、寄る辺なくさまよう人々の姿を見て、「かわいそうだ」(はらわたがちぎれる思いがする、の意)と言われたのです。
 人々に魂の本当の救いを与えたい、それによって主イエスに対する真実の信頼へと導きたい、それが弟子たちに負わされた課題である。そういう思いを込めて、主イエスは、弟子たちの「七つのパン」(6節)を用いて、四千人の人々を養う給食の奇跡を行われたのだと思うのです。