メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」






「神の言葉を無にしている」       マルコによる福音書 7章1−13節

 「昔の人の言い伝え」(3節)とあります。これは、神の律法(中心的には十戒)の解釈集です。神の律法を現実生活に適用していくためには、律法を解釈することが必要であるとして、長い年月をかけて神の民イスラエルの中に生み出されてきた、解釈の集積です。そしてそれは、神の律法を「解釈」したものとして、律法と同等の権威をもつと考えられて来ました。
 しかしここに、深刻な問題が生じて来たのです。神の律法を守ることを巧みに回避するために、「昔の人の言い伝え」を利用するということが起こって来たのです。「あなたに差し上げるべきものは、何でもコルバン、つまり神への供え物です」(11節)という誓約を実行することは、「父母を敬え」という律法を行うことに優先すると考えられるようになったのです。そのような「言い伝え」によって、巧妙に律法を回避することができたのです。しかもそれによって、実際には「父母を敬え」という律法に背いていながら、自分は神の御前に「正しい」という自負を守ることができたのです。
 そもそも神の律法(御言葉)の本来の目的は、人を「義人」として神の御前に立たせるためではなく、本当には神の律法に生き得ない自らの貧しい罪の現実に気づかせて、「罪人」として神の御前に立たせるためだったのです。私たちが神の御前に真実に罪人として立つ時、主キリストにおける神の赦しと救いの恵みによって、聖霊の働きの中で、私たちは義なる者として生きる力を与えられるのです。「昔の人の言い伝え」はそのような律法の本来の働きを妨げるのです。そこに「昔の人の言い伝え」の問題があったのです。