メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」






「記念として語り伝えられる」     マルコによる福音書14章1−11節

 主イエスの十字架の死の時が間近に迫る中、一人の女性が「非常に高価な」香油を、食事中の主イエスの頭に突然注ぎかけたのです。この香油は「三百デナリオン以上に売る」(5節)ことができるというのですから、当時の労働者の1年分の賃金に相当するほどの高価なものであったことが分かります。
 それほどに高価な香油をイエスの頭に注ぎかけたこの女性の気持ちとは、どういうものだったのでしょうか。
 この女性は、主イエスの十字架の死が、単にイスラエルの指導者たちの「計略」(1節)による死ではなく、他ならない自分の罪の、そもそもすべての人間の罪の贖いのための、神の御子、メシアの死であることを理解したのです。
 主イエスの十字架の死がなければ、自分の罪、そしてすべての人間の罪が決して贖われることができないこと、人間の罪が神の御前にそれほど大きなものであること、そして、罪が贖われることがなければ、誰も神の救いに生きることはできないことを、この女性は理解したのです。主イエスが語る御言葉を深く味わい知ることによって。
 その主イエスの十字架の死が間近に迫っていることを知った時、女性は、十字架の死に向かわれる主イエスに対する心からの感謝と、惜別と、献身の思いを込めて、高価な香油を主イエスの頭に注ぎかけたのです。それ以外に、女性は十字架の死に向かわれる主イエスに対して、自分の思いを言い表すすべを知らなかったのです。
 その女性の気持ちを深く受け止めて、主イエスは「世界中どこでも、福音が宣べ伝えられる所では、この人のしたことも記念として語り伝えられるだろう。」(9節)と言ってくださったのです。