メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」


「先の者が後になり、後の者が先になる」
              マルコによる福音書10章23−31


 主イエスは、「わたしのためまた福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、
子供、畑を捨てた者はだれでも、今この世で、迫害も受けるが、家、兄弟、
姉妹、母、子供、畑も百倍受け、後の世では永遠の命を受ける」(29〜30節)
と言われました。
 主イエスを信じる信仰の故に、家族を初めとするこの世の諸関係との関わ
り(しがらみ)を捨て、それから自由になることは、確かに「迫害」を受ける、
言い換えれば、様々の批判を受けることになります。しかし、主イエスを信
じる信仰に基づく愛と赦しに生きることによって、この世における、家族を
初めとする諸関係の「百倍」の恵みを受けることができ、それと共に永遠の命
を受け継ぐ者となる、と主イエスは約束してくださっているのです。慰めに
満ちた言葉です。
 その上で、主イエスは「先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者
が先になる」(31節)という信仰における逆転現象が起こることに気をつける
ように、と警告されるのです。先に信仰に入った者が後から信仰に入った者
に追い越されるという逆転現象が起こる、と主イエスは言われるのです。
 なぜ主イエスはこのようなことを言われたのでしょうか。28節のペトロの
言葉に原因があるのではないでしょうか。「このとおり、わたしたちは何もか
も捨ててあなたに従って参りました」という言葉です。主イエスを信じる信
仰の故にすべてを捨てたという「誇り」の気持ちです。この誇りが信仰の停滞
を招くのです。主イエスとの生きた関係が失われるのです。信仰が観念化す
るのです。すべてを捨てても、この誇りの故に、不信仰になるのです。この
不信仰の故に、「先の者が後になり、後の者が先になる」という逆転現象が起
こるのです。信仰者はこのことによく気づいているべきである、と主イエス
は言われるのです。