メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」


「感謝の祈りをささげて、配られた」

              マルコによる福音書 8章 1−10

 「群衆がかわいそうだ。もう三日もわたしと一緒にいるのに、食べ物がな
い」(2節)と主イエスは言われました。四千人以上もの大群衆が「人里離れ
た」荒れ野で、食べ物なしに「三日間」も主イエスと共にいたという事実に
驚かされます。普通では考えられないことです。
 なぜこのようなことが起こりえたのでしょうか。それは、人々が「このお
方こそ、神から遣わされたメシアである」と心の底から信じたからではない
でしょうか。このお方は神と共にある、確かな方で、このお方と共にいれば
安心である、神が守りたもう。そういう確信が人々の心に深くあったからで
しょう。
 そうであれば、弟子たちはその事実をしっかり心に刻むべきだったのです。
そして弟子たちも、主イエスが共にいてくださるから安心であるという確信
に立つべきだったのです。しかし弟子たちは、主イエスに「空腹のまま家に
帰らせると、途中で疲れきってしまうだろう」(3節)と言われると(主イエ
スは弟子たちの信仰を試すためにそう言われたのです。ヨハネ福音書66
節)、深く動揺し「こんな人里離れた所で、いったいどこからパンを手に入
れて、これだけの人に十分食べさせることができるでしょうか」(4節)と言
って、うろたえたのです。弟子たちは、この世の現実に心奪われ、主が共に
いてくださる信仰に堅く立つことができなかったのです。
 しかし、主イエスは、この世の現実がどんなに困難であろうと、神が共に
いてくださる信仰から離れることはありませんでした。主イエスは「既に世
に勝って」おられたのです(ヨハネ1633節)。主イエスは、父なる神への
信仰の勝利の中で、「感謝の祈りをささげ」パンを配られたのです(6節)。主
イエスの信仰の勝利が、四千人以上もの人々を養って余るある奇跡として現
わされたのです。