メッセージ  (説教より)
「マルコによる福音書」


「神の国は近づいた」    マルコによる福音書1章14−15節

 「ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤへ行き、神の福音を宣べ伝えて」(14節)とあります。主イエスが福音を宣べ伝え始めたきっかけは、バプテスマのヨハネがガリラヤの領主へロデによって捕えられたことでした。
 このことは何を意味しているのでしょうか。ヨハネは預言者として多くの人の尊敬を集めていました。ヨハネのもとにはユダヤ全土から多くの人が来て、悔い改めのバプテスマを受けました(マタイ3章5節)。そのヨハネが、へロデの結婚の不正を批判したかどで、へロデに捕らえられ、やがて首を切られて殺されてしまうのです(マタイ11章2節以下)。その事実は人々に深い無力感を与えたのではないでしょうか。神の正義、神の支配が本当にあるのか、そういう虚無感が人々の心を覆ったのではないでしょうか。
 その時を主イエスはご自身の福音宣教の出発の時とされたのです。「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」(15節)と語りつつ。「神の国」とは、神の支配・統治ということです。神の救いの支配が始まった、そういう時が来た、と言われるのです。ヨハネが捕らえられ、人間の罪がいよいよ露わになる現実のただ中で。何を根拠に主イエスはそのように言われるのでしょうか。ご自身の十字架の死を根拠にそう言われるのです。主イエスが、人問の罪をその極みまで十字架の死によって忍び抜くことによって、人間の罪に勝利された時、罪人を救う神の救いの支配が始まる、と言われるのです。罪人が罪を告白することによって神の救いの支配に生かされる。 そんな有難いことがあるでしょうか。そういう恵みの時が始まったのです。