メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」





「この目であなたの救いを見たのですから」    ルカ福音書2章22−35節

 老信仰者シメオンについて、「この人は正しい人で信仰があつく、イスラエルの慰められるのを待ち望み」(25節)と記されています。シメオンは、神の民イスラエルの「限界」をよく知っていたのです。どんなに律法に励み、神の御前に正しく生きようとしても、罪の汚れを取り除くことができない。ダビデが詩編51編で「神よ、わたしの内に清い心を創造し、新しく確かな霊を授けてください。」(12節)と祈り求めたようなメシアが到来し、そのメシアの清き命に与ることがなければ、神の民イスラエルは決して救われることができないことを、よく知っていたのです。それ故にシメオンはメシアの到来を切に待ち望んだのです。
 両親によって神殿に連れて来られた幼子イエスを腕に抱き、シメオンは「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり、この僕を安らかに去らせてくださいます。わたしはこの目であなたの救いを見たからです。」(29〜30節)と語りました。見た目にはまったく普通の赤ちゃんです。しかし、この幼子の中に、神が共にいてくださるのです。いや、この幼子こそ神の命そのものなのです。シメオンは、聖霊の導きの中で、そのことを知ることができたのです。それと共にシメオンは深い喜びに満たされたのです。今こそ神の民イスラエルは、いや、すべての異邦人は、どんなに罪深い者であっても、この幼子の命に与ることによって、心清められた者として生きることができる。神はそのような救い主をお与えくださった。聖霊の助けの中で、そう信じることによって、シメオンは深い安息へと、心の解放へと導かれることができたのです。