メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」





「神の御子の誕生」 ルカによる福音書2章1−20節

 クリスマスは、「神の御子の誕生」という形をとって、神ご自身が人間の救いのために、人間の罪の現実のただ中においで下さった、ただ一つの、真に喜ばしい出来事です。しかしその誕生の現実は、本当に貧しい、深い挫折の危機を含んだ、慎ましい形をとったものでした。
ロ−マ皇帝による「住民登録」(2節)のために、マリアとヨセフがガリラヤのナザレからユダヤのベツレヘムまでの旅を強いられたことも、その一つでした。これによって、ベツレヘムでのメシアの誕生という神の約束が成就されることになるのですが、身重のマリアにとって、それはただ苛酷な、厭わしい旅でしかなかったのです。
そのような現実の中でマリアとヨセフを支えたのは、他ならないマリアの胎の命でした。この命が与えられている限り、神は私たちを守りたもう。その信仰に支えられて、二人は困難な現実を耐えることができたのです。そして、馬小屋での御子の誕生(7節)は、本当に貧しい姿をとったものでしたが、マリアとヨセフにとっては、あらゆる困難を通して実現された神の守りの確かさを証しするものともなり、溢れるばかりの喜びに二人を満たしたのです。
救い主誕生の最初の訪問者として選ばれた「羊飼いたち」にとっても、なぜ自分たちのような者が選ばれたのかという問いがありました。しかし、「布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子」(12節)がメシアの「しるし」であると語られることによって、その躓きは乗り越えられたのです。
こうしてクリスマスの出来事は、深い危機を乗り越えて実現されたのです。