メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」





「救いの準備」 ルカによる福音書1章5−25節

 神は、新しい救いの御業を、神の民イスラエルの歴史の中で始められました。しかしそれは、救い主イエス・キリストの誕生をもってではなく、その救い主の先駆けとなったバプテスマのヨハネの誕生をもってのことでした。それ故に、ルカ福音書は、クリスマスの出来事をバプテスマのヨハネの誕生をもって書き始めているのです。
 ヨハネの誕生は、主イエスの誕生とは対照的です。主イエスが全く無名の出身であったのに対して、ヨハネは、祭司としての父と大祭司「アロン家の一人娘」である母を持つ、神の民イスラエルのエリート階級の出身でした。そういうヨハネであったからこそ、後に、人々に神の御前での「悔い改め」を語り、「自分がその履物のひもを解く値打ちもない方」(3章16節)としての主イエスを紹介することを通して、メシアの先駆けとしての働きをすることができたのです。人間の現実を見据えた、深い神のご計画を思わされます。
 ヨハネの誕生の告知も、メシアの先駆けの誕生にふさわしいものでした。神の民イスラエルの信仰の伝統のただ中で、しかし、それを超える仕方で、ヨハネ誕生の告知がなされたのです。ザカリアが聖所で、祭司の務めとして最も重要な「香をたく」(祈りを献げる)業を行っている、そのただ中で、天使によって告知がなされたのです。祭司ザカリアはそれを信じることができず、戒めとして「口が利けなく」(20節)されることによって、祭司としての職務を全うすることができなかったのです。それによって祭司職が空しいものとされたのです。そのような仕方でヨハネ誕生の告知がなされたのです。
このようにして神は、神の民イスラエルの歴史の中で、その歴史を踏まえつつ、しかし、それを超える仕方で、新しい救いの御業を始められたのです。