メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」


「わたしの霊は主をあがめ」
                ルカ福音書 1章39-56節

 マリアは、親族エリサベトとの交わりの中で、自分が救い主の母として選ば
れた恵みを改めて確認することができ、あふれる感謝の中で神への賛美を献げ
ました。「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえ
ます。身分の低い、この主のはしためにも目を留めてくださったからです。~」
(47節以下)。マリアは、自分が取るに足りない小さな人間であることを知って
いました。そのような者を救い主の母として選んでくだった神の憐れみの恵み
による選びをマリアは賛美しています。
 しかし、このマリアの賛美(マリア賛歌)の中で示されていることは、マリ
アが自分が小さな取るに足りない人間であるにもかかわらず選ばれたというよ
り、むしろ、そのような人間であるからこそ選ばれたという神の不思議な、人
の思いを超える選びを賛美していることです。このことが強調されています。
この世の常識であれば、人が選ばれるのにはそれなりの理由があります。能力
があるとか役に立つとか、何らかの価値があるから選ばれるのです。それがこ
の世の常識です。しかし神は、そういうこの世の人間の常識を超えて、まった
く選ばれるに値しない、神に見捨てられて当然のような者を選んでくださり、
しかも救い主の母となるという最高の使命、最大の任務に生きる使命を与えて
くださった。その神の前代未聞の選びの不思議さをマリアはたたえているので
す。そして、その神の選びの不思議さにもかかわらずではなく、その選びの不
思議さ(恵み深さ)の故に、マリアは自分の選びを確信することができたので
す。
 「その憐れみは代々に限りなく、主を畏れる者に及びます。主はその腕で力
を振るい、思い上がる者を打ち散らし、権力ある者をその座から引き降ろし、
身分の低い者を高く上げ~」(51節以下)という厳しい認識は、そのことを意味
しているのです。小さな者、神の御前に謙ることのできる者をこそ選んで用い
てくださる神の選びの不思議さ、恵み深さをマリアはたたえているのです。