メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」


「天上の賛美」            ルカによる福音書2章1-20節

 主イエスのお誕生についての記述の簡素さに驚かされます。「彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた」(6〜7節)と記されているだけです。ついに神の御子が誕生したと、大げさに騒ぎ立てるような記述ではありません。
 なぜでしょうか。それは、7節の「宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」という言葉が暗示しているように、このお方が人間の罪を負う苦難の生涯を歩まれるからです。そのことを暗示した書き方になっているのです。そして事実、神の御子はその誕生の初めから苦難を負われたのです。
 ただ、野宿しながら羊の群れの番をしていた羊飼いたちに、天の大軍が現れ、神を賛美したことが記されています。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」(14節)。ほんの一握りの人間にしか知られないわびしい御子の誕生でしたが、天では天使の大軍が賛美の大合唱を献げていたのです。そのことを知ることは深い慰めです。
 ローマ皇帝による住民登録のために、ベツレヘムヘの旅を余儀なくされたマリアとヨセフに対しても、常に天上の賛美があり、彼らの旅路を励ましたのではないでしょうか。厳しいこの世の現実の中で、嵐の中の小舟のように翻弄されつつも、マリアの胎の中に確実に成長し臨月を迎えようとしている幼子の命によって、「この命と共に神が守りたもう」という信仰によって苦難を耐え忍んだ二人に対して、「天上の賛美」が常に伴い、彼らの旅路を支えたのではないでしょうか。そのことを思うことは大きな心の慰めです。