メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」


 

「聖霊があなたに降り」     ルカによる福音書1章26-38節


 救い主の先駆けとなるヨハネの両親(ザカリアとエリサべ卜)に比べて、救い主の母となるマリアについての記述があまりに簡単なことに驚かされます。ほとんど無名の、まったく庶民の女性である一人の女性が選ばれたので す。しかも、その女性が信仰に熱心であるとか、優れた能力があるなどということも一切語られていません(27節)。その記述の簡潔さに驚かされます。その記述の仕方の中にすでに、マリアから生まれる救い主がすべての人間を神の命へと導く、愛と憐れみに満ちた救い主であることが示されています。
 このマリアにとって不可解であったことは、しかし、自分のような無名の女性が選ばれたことではなく、男性との交わりの経験がない自分がどうして神の御子となる子どもを産むことができるのか、ということでした。聖霊によって子を宿すことは、マリア自身にとっても信じがたいことだったのです。
 そのマリアのために、神は周到な準備をしてくださったのです。親族エリサベ卜の懐妊とその「六か月目」(26節)でした。「あなたの親類のエリサべトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。神にできないことは何一つない」(36〜37 節)。この天使の言葉が神の言葉として、聖霊の働きの中で全能の御力をもってマリアの心に語り込まれた時、マリアの心は砕かれ、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」(38節)と、自らの選びを心から受け入れることができたのです。このマリアの受容の中で、クリスマスの出来事は初めて実現の緒につくことができたのです。