メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」


「主のために用意する」    ルカによる福音書1章5-25節

 クリスマスの出来事は、救い主の誕生からではなく、救い主の先駆けであるバプテスマのヨハネの誕生から始まっています。ここに、神の深い配慮が伺えます。旧約聖書の信仰を重んじ、その完成を明らかにしつつ、旧約聖書の信仰を超えた、まったく新しい信仰が始められる、そういう神のご意志がバプテスマのヨハネの誕生の中に示されています。
 ヨハネの両親は「アビヤ組の祭司」ザ力リアであり、「アロン家の娘の一人」エリサべ卜でした。「二人とも神の前に正しい人で、主の掟と定めをすべて守り、非のうちどころがない」人たちでした(5〜6節)。父ザカリアがヨハネの誕生を告げられたのは、旧約の祭儀礼拝の中心である香をたく行為のただ中でした。香は神への祈りを意味します。その祈りに答えて神はヨハネの誕生を告げてくださったのです。生まれる幼子については、「彼は主の御前に偉大な人になり、ぶどう酒や強い酒を飲まず、既に母の胎にいるときから聖霊に満たされていて」(15節)と語られています。これは「ナジル人」(民数記 6章)の誓願に生きることを意味します。メシアの先駆けは、旧約聖書の信仰に深く生き、それを完成する人物だったのです。
 そのヨハネが、「わたしの後から来る方は、わたしよりも優れておられる。わたしは、その履物をお脱がせする値打ちもない」(マタイ福音書3章11節)として、主イエスを人々に紹介したのです。父ザ力リアは天使の言葉を信じなかった故に、話すことができなくなり、祭司の務めを全うすることができませんでした(21〜22節)。
この事実の中に、旧約の信仰を超える新しい信仰の到来が予告されています。