メッセージ  (説教より)
「ルカによる福音書」


「救い主は飼い葉桶の中に」        ルカ福音書2章1−7節

「そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た」(1節)とあります。救い主イエスがお生まれになる時のことでした。このために、マリアとヨセフは「ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って」(4節)行かざるを得なかったのです。身重のマリアにとって、それは過酷なそして危険な旅でした。なぜ神は、このような試練をお与えになるのか、と思わされる旅でした。
しかし、ここに神の「摂理」がありました。救い主は「ダビデの町」ベツレヘムで生まれなければならなかったからです。神は、その旧約の預言を成就するために、この世の最強の(敵でさえある!)指導者の支配の中で、マリアとヨセフを導かれたのです。
 過酷な試練の中で、しかし、マリアとヨセフは不思議な平安に守られながら、旅を続けることができました。二人の心を支えたのは、マリアの胎の中に与えられた神の命そのものでした。「この命が、神がお与えくださった命である限り、この命と共に、神がお守りくださる」、そういう信仰によって二人は支えられたのです。この世の現実を見れば、信仰の疑いへと導かれざるを得ませんでした。しかし、マリアの胎の命を見つめれば、そこから不思議な平安が与えられたのです。マリアとヨセフは、ひたすらマリアの中に宿った神の命を見つめることによって、この世の現実に耐え、信仰の望みに生かされたのです。ベツレヘムの馬小屋の飼い葉桶の中に寝かされた幼子は、そういうマリアとヨセフの信仰の望みの中に誕生した神の命であったのです。