メッセージ  (説教より)
「ヨハネによる福音書」





「父のもとへ上る」         ヨハネによる福音書20章11−18節

 主イエスが葬られた墓の前で泣いていたマグダラのマリアに、復活の主が姿を隠して現れ、「マリア」と声をかけられました。その一言によってマリアの曇らされていた目が開かれ、自分の前にいる方が復活の主イエスであることに気づいて、「先生(ラボ二)」と言って主イエスにしがみついたのです。
 その時、主イエスは「わたしにすがりつくのはよしなさい。まだ父のもとに上っていないのだから。」(17節)と言われました。なぜ、主イエスは「すがりつくのはやめなさい」と言われたのでしょうか。それはマリアが、復活された主イエスが、自分が敬愛してやまない生前の主イエスと同じである、と考えたからです。そのお方が再び自分の前にいてくださる、このお方を手放したくない、そんな思いで主イエスにしがみついたのではないでしょうか。
 しかし、復活の主イエスは、生前の主イエスとは違うのです。いや、生前の主イエスと同じですが、今や「罪の贖い」を成就された方なのです。マリアのためにも十字架にかかってくださった方なのです。本当ならマリア自身が神の御前に負わなければならない断罪の十字架を、主イエスが代わって担ってくださったのです。今や主イエスは、全ての人間の罪を贖い、メシアとしての業を完成して、天の父なる神のみもとへ帰って行こうとしておられるのです。マリアは、そういう主イエスを知らなければならなかったのです。その時にはマリアは、主イエスにしがみつくより前に、「わが主よ、わが神よ」(20章28節)と言って、深い感謝をもって復活の主の御前にひれ伏さざるを得なかったのではないでしょうか。