メッセージ  (説教より)
「創世記」


「ヤコブの結婚」                 創世記29章14-30節


 おじラバンには、姉レアと妹ラケルの二人の娘がいました。ヤコブはラケルを愛し、ラケルとの結婚を条件に、7年間おじラバンのもとで働きました。しかし、結婚式の当日になって明らかにされたのは、レアとの結婚でした。
「どうしてこんなことをなさったのですか。わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。なぜ、わたしをだましたのですか」(25節)とおじラバンを責めつつも、ヤコブはラケルとの結婚のためにさらに7年間はラバンのもとで働かなければなりませんでした。確かにヤコブは、体よく騙され、14年間ラバンのもとで働かなければなりませんでした。
 おじラバンを責めつつ、ヤコブの心に去来したことは、かつての自分自身の姿だったのではなかったでしょうか。兄エサウをだまして長子の特権を奪い、父イサクをだまして兄エサウの祝福を奪い、そのためにおじラバンのもとに身を寄せなければならなかった自らの過去を。しかし、神ヤーウェは、そのようなヤコブをお見捨てにならず、孤独な旅の途上において天からの啓示をもってヤコブを励ましてくださったのです。
そのことを思った時、ヤコブはおじラバンを憎むことはできなかったのではないでしょうか。ラバンを責めつつも、自らに与えられた立場を受け入れ、黙々とそれに服する生活に甘んじざるを得なかったのです。
心砕かれ、謙遜にさせられたヤコブでありました。理不尽な罪を犯し合う人間の現実のただ中にあって、神が共にいて下さる。その望みの中に、忍耐強く耐え忍んだヤコブであったのではないでしょうか。