メッセージ　　(説教より） 「創世記」

「石を枕にして」　　　　　　　　　　　　　　創世記28章10-22節

　兄エサウとの確執の中で身の危険を感じたヤコブは、兄から身を守るために、母リベカの兄ラバンが住むハランへと一人旅立ったのです。「とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすことにした。ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。」（11節）と記されています。「石を枕にして」野宿をするヤコブの中に、深い孤独と不安のうちに立ちすくむやコブの姿が示されています。このまま死んでしまうかもしれないという恐れに包まれたヤコブだったのではないでしょうか。
　その時、ヤコブは初めて本当に真剣に、自分のすべてを献げるような気持ちで神に祈ったのではないでしょうか。神よ、私を憐れみ給え、と。
　そのヤコブの必死の祈りに、神ヤーウェが応えてくださったのです。そのことがヤコブの夢の中に示されたのです。「すると、彼は夢を見た。先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。」（12節）と記されています。ヤコブの祈りが天の神に通じていることを意味する夢です。
　まったく孤独な、神からも見捨てられたかと思われる絶望的状況の中で、いや、そうではない、そのような状況の中にあっても、神が共にいてくださる、神が共にあって私をお守りくださるという圧倒的な恵みが明らかにされたのです。その時、恐ろしい絶望の場所が神の恵みに溢れる望みの場所に変わったのです。ヤコブにその資格があったからでは決してなく、ただやコブの必死の祈りに神が憐れんで応えてくださったからなのです。