メッセージ  (説教より)
「コリントの信徒への手紙一」





「霊と力の証明」         第一コリント書2章1−5節

 「神の秘められた計画を宣べ伝えるのに優れた言葉や知恵を用いませんでした」(1節)とパウロは語っています。「神の秘められた計画」とは、直訳すれば「神の証し」です。神ご自身が私たちの魂の内に聖霊において働きかけて、神の救いが本当であることを証明してくださるということです。1章6節の「キリストの証し」も同じです。
そのような「神の証し」「キリストの証し」を宣べ伝えるのに、「優れた言葉や知恵」は必要ないのです。否、何の役にも立たないのです。ただ、宣べ伝える者自身が実際に「神の証し」に与り、主キリストにおける神の救いに生かされ、その恵みの中で語る時に、神ご自身がその言葉を用いて聴く者の魂に聖霊によって働きかけ、主キリストにおける神の救いが本当のことであることを証明してくださるのです。それが「“霊”と力の証明」(4節)です。主イエス・キリストにおける神の救いは、そのような仕方によってのみ人に「宣べ伝える」ことができるのです。
福音宣教において人間の知恵や力が無力であることは、パウロ自身の経験に基づく実感でした。かつてパウロはキリスト教徒を迫害する人間でした。自分が正しく、イエスが間違っていると信じて疑いませんでした。しかし、生ける復活の主イエスに出会い、その恵みに生かされた時、心の目が開かれ、自分がいかに人間的な肉の思いによって囚われ支配された人間であるかが分かったのです。その経験を通してパウロは、福音の真理を知ることにおいて人間の知恵と力がいかに無力なものであるかを思い知らされたのです。