メッセージ  (説教より)
「使徒言行録」






「皇帝への上訴、ローマへ」       使徒言行録25章1-12節

 パウロは、ローマの守備隊長(千人隊長)によって守られた治安の中で、エルサレム神殿の境内において、ユダヤ人を前にダマスコ途上での復活の主イエスとの自らの出会いと回心の経験を語ることができました(22章)。また同様に、千人隊長の管理のもとに開かれた最高法院において、ユダヤ人の代表である祭司長や議員たちの前で、自らの信仰を弁明する機会を与えられました(23章)。さらにパウロは、ローマ官憲によってユダヤ人たちの暗殺計画から守られる中で、ローマ総督(フェリクスとフェストゥス)とユダヤの王アグリッパの前で、主の福音を語ることができました(24-26章)。
ローマの官憲は、特別にパウロに好意をもっていたわけではありません。ただ事態を公正に見れば、(主イエスの場合もそうでしたが)パウロを捕えて断罪しなければならない罪を見出すことはできなかったのです(26章32節)。
 ここから、国家(この世の権力)と教会(福音宣教)の関係を考えることができます。国家が神から与えられている使命は、この世の秩序を守ることです。この世の秩序をできる限り公平に保つのです。弱者に配慮しつつ、主イエスの福音を指し示すようなこの世の秩序こそ理想ですが、人間の罪の故に、不完全であらざるを得ません。いずれにしても、教会が自由に思う存分福音を語ることができるような秩序を提供することが神から与えられた国家(この世の権力)の使命なのです。その中で、教会は十分に福音を宣べ伝え、一人でも多くのものが主イエスを信じ、その救いに与って生きることができるように導くのです。それが、神から与えられた教会の使命なのです。