メッセージ  (説教より)
「使徒言行録」






「パウロの逮捕と弁明」     使徒言行録21章27-36節

 「彼らは“霊”に動かされ、エルサレムへ行かないようにと、パウロに繰り返して言った」(4節)とあり、また「わたしたちはこれを聞き、土地の人と一緒になって、エルサレムへは上らないようにと、パウロにしきりに頼んだ」(12節)と記されています。
 教会の仲間たちは聖霊の導きの中で、パウロのエルサレム行きを神の御心ではないとして、また死の危険があることとして反対したのですが、パウロはそれを押し切るようにして、死を覚悟の上でエルサレムに向かったのです。
 どうしてもエルサレムに行かなければならないという思いが、パウロの心を支配していたのです。異邦人教会にとって母教会であるエルサレム教会に、諸教会から集めた献金を持って行かなければならないということもありましたが、それ以上にパウロの心を駆り立てていたのは、パウロの回心に関わる事柄でした。
 パウロはかつて、キリスト教徒迫害者として、キリスト教徒を捕えて死に至らしめました。パウロは、それが神の御心であり、正しいことであると信じて疑わなかったのです。しかし復活の主に出会って、まさにそのような思いこそ不信仰な肉の思いであることを知ったのです。そのことをエルサレムの同胞のユダヤ人に語りたい。神の御心は、神の律法を守ることではなく、主キリストを信じることであることを、同胞のユダヤ人たちに知らせなければならない、たとえ死の危険を冒しても。それが、あのような経験を神から与えられた自らの使命である。そう信じて疑わないパウロだったのです。