導かれて教会報から)

イースターと花 2題
F.U 
1 紅い野ばら
 小学生の頃に母から聞いた話。
 神様が天地を創り、人や生き物に名前を付けられた時、灰色の小さな鳥に「お前は胸あかだよ。お前の心掛けひとつで赤い胸毛をあげることにしよう。」と約束をなさった。以来、胸あかはひっそりと茨の茂みの中の小さな野ばらの葉にかくれて、長い年月が流れていった。そしてときどき先祖がいただいた、神様のお約束を思い出し、灰色の胸毛を悲しげに眺めてはチッチッとさえずっていた。
 ところが、或る日茨を踏んで大勢の人が山に登ってきた。親鳥は羽の下にヒナをかばいながら、ソッと外を垣間見た。十字架が立てられ一人は茨の冠を被せられて額にとげが刺さって、血がしたたるのを見た。私が鷲のように強かったら、あの人の両手の釘を引き抜いてやるのに! もう小鳥は居たたまれなくなり舞い上がった。そしてその方の額に刺さったトゲをくちばしで引きぬいた。その時、血がひとしずく小鳥の胸に落ち、見るまに広がった。
 「お前のお蔭で、一族が世の初めから求めて来たものを、今こそ得られたのだよ」と声がした。
 「胸が紅いよ、野ばらよりもっと紅いよ」。と小鳥たちは叫んだ。
水で洗っても、血のようなくれないの色は輝いていた。
 私は、この話がラーゲルレーヴの「キリスト伝説集」にあることを青年になって知った。そして最近、亡母の遺品の中に変色した文庫本を見つけた。母からのイースターの贈物と思い大切にしている。

2.野の百合
 百合と主のご復活は聖書の中では結び付かないようだが、シャロンの花から始めて、美しい姿、かぐわしい香は、聖書の各所に讃えられている。以前、仕事の都合でアメリカに住んでいた弟の家で復活節を過ごしたとき、近くの教会の聖餐式に出かけた。暗い会堂の天井を圧する程の山百合が生けられていた。主の復活の喜びの表現に、野の百合が選ばれていることに先ず感動を覚えた。
 それ以来、日陰に力強く立っている山百合こそ、イースターに似合わしい花と思っている