◆吉野由美子先生のブログ(9/6配)から◆
広島ですばらしい会に出会った
もう半年くらい前になるのだが、広島の「自立をすすめる会」の会長さん
からメールが来て、「20周年のイベントで講演してほしい」との
依頼があった。
この会では丁度10年前に「高知での視覚リハシステムの構築」のことを
講演されていただいたことがあって、また呼んでいただいたことに感謝して、
依頼をお引き受けした。
私の講演のテーマは「支援とリハビリテーションと自立について考える」
という硬いものだったけれど、但し書きに「同行援護のことを通して考える」
と書いたのが当たったのか、20周年記念のイベントだったからか、100人
以上の方が集まって下さって、その多くが視覚障害当事者だという事にも
驚かされた。
講演の終わった後、第2部で「みんなの広場」と題する交流会が行なわれて、
私はそこにも参加させていただいたのだが、そこでは、出席した方たちが近況
を一言ずつ話すのであるが、その体験談の多くが「この会に出会って人生が
変わった」とか「見えなくなってから歩行訓練を受けて一人で歩けるように
なった」というものだった。
この会の起こりが「見えなくても一人で歩きたい」という一人の女性の
『歩行を実現する会』からだと聞いて、なるほどと思ったのだが、
「どうしても一人で歩きたい」と言った当事者の方に対して、「白杖できちんと
歩かせてみせる」と言い切った一人の歩行訓練士がいて、
「全然見えない人が本当に一人で歩けるようになるのか確認する」と思って
歩行訓練をつぶさに見て、その成果に驚いて、そして現在支援者の一員になって
いる方がいて、その方たちの熱気が今も生きている会だということを知り
またまた感激した。
この会が発足した20年以上前は、ガイドヘルパーをはじめ視覚障害者に対す
るサービスは、今ほど充実していなかったから、視覚障害者当事者も、そして
支援をする側の専門家も、リハビリテーション効果を実証しよう、何もないとこ
ろから何とか何かを作りだそうという、そんな意欲に充ち満ちていたのだと
思った。
この初期の頃の意欲、それから当事者の方たちの「見えていた時出来ていた
ことを、また出来るようになりたい」という熱意のようなものが、
今残念ながら受け継がれていないのだ。
どうしてそうなったのだろう。中途視覚障害者が高齢化したからか。
訪問しての歩行訓練なども昔に比べて普及したから、こんな開拓精神はいらなく
なったのか。厚生労働省の方が言うように「視覚障害者の問題は解決済み」
なのか。いや、そんなことないはずだ。今でも視覚リハを必要としている方たち
はたくさんいるし、それを何とかしないといけないし。
この会に出させていただいて、私は改めて視覚リハの必要性を、出席した当事
者の方たちから教わり、そして「当事者からも、支援する専門家からも失われて
しまったように見える開拓者精神」を、どのように呼び覚まし
継承ていけばよいのか。つくづく考えされられた次第である。
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