社会主義のために

社会主義ををめぐるさまざまな問題について、見解・情報・資料などを公表します。



参院選は国民投票の第一幕(朝日新聞〔大阪本社版〕「声」欄 ’07.06.22掲載分に一部加筆・修正

 安倍首相は早くから憲法改正を、7月に予定される参院選の争点にすると公言してきた。しかし、自殺した松岡前農水相にまつわる政治と金の問題、「消えた年金」問題などで国民の怒りは頂点に達し、内閣の支持率は急落した。
 だが、重要なことは、こうした中でも依然、自民党が参院選公約の冒頭に「平成22年の国会で憲法改正案の発議をめざす」と掲げ、改憲の意図を表明していることである。公明党も公約に事実上の改憲にほかならぬ「加憲」を取り上げた。
 国民が年金問題で心底怒っているのはよく分かるが、このままでは自民党の思うつぼにはまって改憲問題が背後に押しやられ、一種の争点隠しで自民党のもくろみにくみする結果になりはしないか。
 自民党の改憲目的の核心は、国に交戦権を認めない9条2項の削除と、集団的自衛権の明記である。そうなれば、子どもや孫がいつの日か戦争に巻き込まれることは必至である。
 憲法改正の発議には衆参両院議員のそれぞれ3分の2の賛成が必要である。今回の参院選で選ばれた議員が憲法改正の発議を左右することは明らかである。いうならば、今度の参院選は憲法改正国民投票の第一幕ともいえる。だとすると、われわれは国民投票に臨むような心構えで、この参院選を迎えねばなるまい。

国民投票法案・強行採決ならば、全国で違憲訴訟を( 07/05/09 JanJan掲載

 衆院で強行採決され、参院で審議中の国民投票法案には、投票日2週間以前ならCM流し放題、公務員の政治活動の制限など、重大な問題が残されている。とりわけ最低得票率の規定を欠いている点は、憲法制定時の経過と精神からみて違憲の疑いがあり、もしこれが参院でも強行採決されるなら、国民主権に対する重大な侵害として、全国的にその効力停止を求める違憲訴訟をおこすべきである。
 現憲法は旧憲法下最後の第90回帝国議会で制定された。当時の憲法担当国務大臣・金森徳次郎は貴族院憲法改正特別委で、国民投票での憲法改正の確定時期の質問を受け、「(国民投票が)投票数3千万であれば、だんだん(開票)結果がわかってきて、(過半数の賛成の)1600万になった時に憲法が確定する。こういう風では困るので手続きをつくらなければならない」と答えている(清水伸編著『逐条日本国憲法審議録』・有斐閣・第3巻743ページ。または、インターネットで、第90回帝国議会・貴族院特別委議事録を参照)。
 第90回帝国議会では、衆議院・貴族院を問わず、具体的な確定要件が出てくるのはこの答弁だけであり、これについて政府・与野党をふくめ、異論や質問はいっさい出ていない。政府側が想定していた投票数3千万は、当時の有権者数約3687万の81.3%、その過半数である1600万の賛成(投票総数の53.3%、対有権者比で44.4%)で憲法が改正されることとなる。常識的な数字であり、帝国議会の議員全体も異論の余地はまったくなかったのである。
 ところが今の国民投票法案(民主党案にも最低投票率の規定はない)では、投票率が4割にとどまった場合、有権者の2割程度の賛成で憲法が変えられてしまう。与党案や民主党案は、ボイコット運動で投票自体が不成立となることをおそれて最低投票率を設けていないといわれるが、そもそもボイコットでつぶされるような憲法改正案が憲法といえるのか。こんなべらぼうな話はない。もし原案のまま強行採決されたなら、全国津々浦々で違憲訴訟を起こそうではないか。(朝日新聞大阪本社版「声」欄4月25日付掲載文に大幅加筆・修正)

 
国民投票法案 即時廃案が筋朝日新聞〔大阪本社版〕「声」欄 ’07.04.25掲載
 衆院で強行採決され、参院で審議中の国民投票法案には、CM放送規制、公務員の政治活動の制限など重大な問題が残されている。とりわけ最低投票率の規定を欠いている点は、憲法制定時の経過と精神から見て違憲の疑いが濃厚である。
 現憲法は旧憲法下最後の第90回帝国議会で制定された。当時の憲法担当の国務大臣金森徳次郎は貴族院憲法改正特別委で、国民投票での憲法制定の確定時期の質問を受け、「(国民投票が)投票数3千万であれば、だんだん(開票)結果がわかってきて、(過半数の賛成の)1600万になった時に憲法が確定する。こういう風では困るので手続きをつくらなければならない」と答えている。
 私が調べた限りでは、具体的な確定要件が出てくるのはこの答弁だけである。当時の開票作業は終了までに数週間かかり、答弁はこうした事情を踏まえているが、政府側が投票数を3千万と想定していたのは間違いない。当時の有権者数で計算すると投票率は81%。ところが今の国民投票法案では、投票率が4割にとどまった場合、有権者の2割程度の賛成で憲法が変えられてしまう。こんなべらぼうな話はない。この法案は即時廃案にし、必要な修正を施して参院選後に再提出すべきである。

「湯の山九条の会」結成アピール
 
筆者が代表世話人になり、3月25日、地元グリーンヒルズ湯の山で、「九条の会」が結成された。ジェームス三木氏が激励に駆けつけてくれたこの結成総会で筆者が草案を書いた以下の「アピール」が採択された。


                                    アピール
 日本国憲法、とりわけ、国に交戦権や集団的自衛権を認めない9条が、いま大きな試練にさらされています。教育の憲法といわれる教育基本本が改悪され、防衛庁が防衛省に昇格されました。自・公与党は、憲法改正の手続きを定める国民投票法案を、5月3日の憲法記念日までに野党抜きの単独ででも強行採決すると言っています。
 安倍首相は、「在職中に憲法を改正する」と公言し、「美しい国づくり」「戦後レジーム(体制)からの脱却」などと唱えながら、一路、改憲へ向かい暴走しつつあります。
 日本は、この60余年、外国へ出かけて人を殺さず、殺されもせずにきました。朝鮮戦争やベトナム戦争のさいにも、アメリカの強力な要求にもかかわらず、直接参戦することはありませんでした。イラクへあれだけの自衛隊員を送りながら、やはり一人も殺さず、殺されもしませんでした。国の交戦権を認めない憲法9の歯止めがあるおかげです。
 改憲論者たちは、「アメリカの押しつけ憲法だ」と言います。しかし、今日、日本国憲法を変え、自国の世界戦略のため日本の自衛隊を最大限利用したいと望んでいるのは、ほかならぬそのアメリカではありませんか。子どもや孫たちが、いつの日かアメリカの起こす戦争にまきこまれ、中東やアフリカなどへ出かけていって殺し合いすることがないよう、憲法9条を守らなければなりません。
 国会議員の頭数で変えられる普通の法律とは違い、国の最高法規である憲法は、主権者であるわたしたち一人ひとりの投票結果で決まります。すでに愛媛県下で43、全国各地では6020の「九条の会」が活動しています。わたしたちも、4〜5年先といわれる国民投票へ向け、地域住民の過半数が9条改定に「ノー」と答えを出すよう、思想信条のいかんにかかわらず、力を合わせてがんばっていこうではありませんか。心で願っているだけでは、憲法9条は守れません。いまこそ、声を上げ、行動を起こしましょう。
 2007年3月25日

なぜ日本で護憲の人民戦線ができないのか

原稿準備中

読売新聞世論調査に見られる護憲派の急伸
 
読売新聞が、毎年同じ質問でおこなっている憲法世論調査で、今年大きな変化が見られ、護憲派が急伸した。3つの回答選択肢のうち「解釈や運用で対応するのは限界なので、憲法9条を改正する」は39%。一方、「これまで通り解釈や運用で対応する」「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」とを合わせた明文改憲否定派が54%だった。昨年は前者が44%、後者が計46%でほぼ拮抗していたから、注目すべき大きな変化だ。
 これにたいし、朝日新聞と毎日新聞は、そろって質問方法を変更し、憲法九条1項と2項それぞれについて改正の是非を聞いている。その結果「朝日」では「1項だけを変える」「2項だけを変える」「1、2項とも変える」の合計が43%と、「1、2項とも変えない」の42%を上回った。「毎日」も同様に改正賛成派が合計で49%、改正反対派が41%だった。このように1、2項を分ける質問方法には、多分に、自民党「新憲法草案」に合わせた、誘導尋問的意図も感じられる。第一、「戦争放棄」を定めた1項だけを変え、「戦力不保持」の2項を残すのは論理矛盾であり、成り立たないが、仮にそういう態度がありえたとして、それは、むしろ護憲論の方に含めるべき数字であろう。

大江健三郎氏、高麗大学講演会で、小泉首相の靖国参拝を批判
 韓国紙中央日報19日付によれば、ノーベル文学賞受賞作家大江健三郎氏は、18日、高麗(コリョ)大学でおこなった講演で小泉首相の靖国参拝に関し、「周辺国家から靖国神社参拝を批判されれば彼はまともな返事もなしにただ『心の自由だ』と言うが、どうして靖国神社のためにそんな『心の自由』を使うのか」と批判した。これは、「私の文学と過去の60年」というテーマで、高麗大文学科の招請で実現された講演会で述べられたもの。
 大江健三郎氏は「小泉首相は『心の自由』を政治的に使った」とし「『心の自由』はもうちょっと大事なものに使わなければならない」と述べた。それとともに「『心の自由』というのはキリスト教とイスラム教が衝突して人間がけがをするようなとき、宗教を批判する自由のようなヒューマニズムのために使わなければならない」と強調した。  2時間ほど行われた講演会には学生と市民400人が参加した。大江健三郎さんは19日、ソウル光化門(クァンファムン)教保(キョボ)ビルで金禹昌(キム・ウチャン)高麗大名誉教授と「東アジア的価値と平和のビジョン」をテーマに公開懇談会をする予定といわれる。