文献1)大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋P86
上記の図の様に大腿部の屈筋群をハムストリングスという。短距離選手にこの肉離れが多
い。
ここの肉離れが発生しやすい理由は、
@神経の二重支配(大腿二頭筋の長頭ー脛骨神経、短頭ー腓骨神経)なので屈曲時にずれ
が生じやすい。
A二関節(股関節・膝関節)に作用する。
B大きな力を出すので疲労しやすい。
以上3つの主な理由があげられる。
また、ハムストリングスの柔軟性の欠如、拮抗筋である大腿四頭筋との筋力比(大腿四頭筋
100:ハムストリングス60以下)が大きいと肉離れを起こしやすい。ランニングフォームの欠
点としてストライドが大きいと肉離れを起こしやすい。
最も肉離れを起こしやすいスタートダッシュ5歩目を分析してみると、足を身体の前に着く。着
いてから、膝が曲がる(曲げないと60l余計な力が加わらない)。この時、ストライドを伸ばさ
ない事が大切。
・着地中に膝を曲げるとハムストリングスが伸ばされる(肉離れの要因)。
・着地後に膝を曲げてもハムストリングスが伸ばされる(肉離れの要因)。
もうひとつ肉離れが起き易い後半80mから膝下を振り出すと肉離れを起こす。
◇肉離れを発生しやすいとみられる疾走フォーム
・回復期後半で、下腿部を過度に前方へ振り出す。
・支持期前半(接地時)で、支持脚を身体のかなり前方に接地する。
・支持期前半で、支持脚の膝関節を大きく屈曲させる。
・支持期後半で、支持脚の膝関節を大きく伸展させてキックする。
具体的な練習では
1)無理な高くももを上げるもも上げ運動をやめ、自然なもも上げをする様に心掛ける。
2)キックで腰を入れる意識をなくす(キックの後半に膝を伸ばさないようにする為)。
3)キックの原動力である股関節伸展筋群のハムストリングスを強化する。
4)膝関節と足関節が着地衝撃によって負けないようにボックスジャンプを利用して腱反射強化
をする。
5)どの練習においてもリラックスを重要課題とする。
短距離走のキック時間は0.1秒しかないが、最大筋力を発揮するのに要する時間は一般に
0.3秒以上かかるという事実をふまえ、最大筋力を高めるだけでなく、ドリルやハードル、ボッ
クスジャンプ等をして腱・腱反射を鍛えるトレーニングをする。
文献2)〜肉離れとスプリントフォームの関係〜バイオメカニクスからみた障害について
より
文献3)〜肉離れとスプリントフォームの関係〜バイオメカニクスからみた障害について より
◇肉離れ・・・筋を包んでいる筋膜の部分断裂から筋そのものの断裂までを含む疾患の総称
で、症状により3段階に分けられる。
1.軽度(1度):筋肉自体や筋周膜にはほとんど変化はなく、筋線維束が引き伸ばされた程
度のもの。局所の圧痛のみの事が多い。
2.中程度(2度):筋周膜の断裂、ごく一部の筋線維の断裂があるが、圧痛だけでなく軽い陥
凹や軽い運動痛もある。陳旧例では瘢痕、癒着は比較的軽症なもの。
3.重症(3度):筋周膜の断裂はもちろん筋自体にも部分断裂があり、圧痛、局所陥凹、運動
痛も著しい。陳旧例では瘢痕、癒着が高度のもの。
応急処置から復帰まで
1.RICE処置(R:rest安静、I:icing氷冷、C:compression圧迫、E:elevation挙上)
受傷後なるべく早く(数分以内)開始する。時間がかかるほど、効果は低くなる。
※二次的低酸素症(secondary hypoxic
injury):一次的外傷性損傷の周辺組織に十分な酸素
文献5)「炎症と損傷の修復」 P40図3-10より
を供給できない結果として発生する。損傷部から末梢にある壊れた血管では血流が停止し、
炎症性のうっ血と泥血のため、その部分にある他の血流が減少する。
文献5)「炎症と損傷の修復」
P40図3-11より
結果として起こる酸素不足は、最終的に細胞の浮腫、破壊、アシドーシス、そしてライソソーム
による消化をもたらすことになる。細胞膜の崩壊とライソソームから細胞内への酵素の放出
は、細胞の壊死につながる。そこで生じる細胞片は、血腫に加えられる。従って、損傷を受け
た組織の総量は増加する。
上記の二次的低酸素症を防ぐ為にRICE処置を速やかに行う必要がある。
手順
1.損傷部位の皮膚に直接アイスパック(0度が望ましい)を当て、身体の形に沿うようにアイス
パックを整える。
2.伸縮包帯でアイスパック並びに損傷部位を固定する。
3.伸縮包帯は受傷後20〜24時間、常に巻いておく。
4.損傷部位を心臓より15〜25cm挙上する。
5.周辺の筋肉がリラックスする為、固定する。
6.30〜45分後にアイスパックを取り除き、伸縮包帯を再び巻いて、挙上する。
7.必要なら患者は短時間でシャワーを浴びるが、損傷部位には伸縮包帯を巻いておく。シャ
ワー後再びアイスパックを適用する。
8.就寝するまで、2時間ごとに、上の要領でアイスパックを適用する。
9.夜中に寝ている時間も伸縮包帯を巻いておく。
適用の頻度
・安静(Rest)−痛みがなく身体部分が機能するまで
・冷却(Ice)−受傷後、間欠的に12〜24時間
・圧迫(Compression)−常に腫脹が消え去るまで
・挙上(Elevasion)−受傷後24時間で、できるだけ
・固定(Stabilization)−痛みなく損傷部位が機能するまで
応急処置後医療機関を受診する
受傷後、復帰するまでのメニュー(痛みが出現しない範囲で行う)
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受傷後2日間 |
1週間 |
2週間 |
3週間 |
4〜6週間 |
RICE処置 |
◎
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温熱療法 |
○
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◎
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自動運動 |
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◎
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筋力トレー
ニング |
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○
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○
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○
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◎
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ジョギング |
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○
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◎
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軽めのラン
ニング |
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○
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ストレッチ |
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○
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○
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◎
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◎ |
*一般的には1度で1週間、2度で3〜4週間、3度で6週間、完全復帰までかかる。
*自動運動とは自分の力で痛みが生じない範囲で行う運動をいう。
腸骨が内転位になり、大腿骨の屈曲筋である腸腰筋、大腿直筋が硬くなり、脚が後
ろさばきになり、その結果ハムストリングスを使いすぎて、違和感、肉離れに移行してい
る症例があります。
今上げた骨盤⇒腰椎⇒大腿直筋・腸腰筋⇒ハムストリングスの順番に調整していかな
いと、ハムストリングスだけを調整しただけでは、よくなりません。
顔を足につけると骨盤の捻じれがとれます。
背中の張りや足の張りにも効果があります。 |
片脚をベッドなどの高いとこ
ろから降ろすように腰を捻ります。 |
足の外側を持ってわき腹を伸ばします。 |
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お尻上げを100回やります |
顎が上がる、お尻がでるといったフォームが改善されます。改善されれば脊髄神経が正常に 働きますので、肉離れのリスクも軽減します。
完全に肉離れに移行してからでは、アイシングぐらいしかできませんので、ハムストリングスに違和感が生じた時点で、山形陸協トレーナーに相談下さい。
当院では肉離れも骨盤特に坐骨の後方偏移とハムストリングスのねじれが必ずありますので、これらの矯正を行い、ハムストリングスが正常に収縮できるようにします。
引用・参考文献
1)山口真二郎著:鍼通電療法テクニック、医道の日本社、2001
2),3)飯 干 明:日本陸連トレーナーセミナー、肉離れとスプリントフォームの関係、
4)栗山節郎編著:新・ストレッチングの実際、南江堂、2000,
5),6)ケネス著:クライオセラピー、ブックハウス・エイチディ、1997,
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