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□ コンセプトについて |
■ はじめに
・創造的であろうと思うあまり、脇道にそれてはならない。通常なされていることを観察し、それをよりよくしようと努力すればそれでよい。
−アントニオ・ガウディ(建築家/イタリア)−
・環境が人を造る。人が環境を造るのではない。
−マーク・トゥエイン(作家/アメリカ)−
・幾何学に王道はない。
−ユークリッド(数学者/ギリシャ)−
・優れた表現者を得る度に、今日古典と呼ばれる作品たちは、初演から何百年を経て、再び時代の最先端に躍り出ることが出来る。
−S.M(音楽家/日本)−
・純朴と純真な真実とは、如何なる時代に於いても、時と場を得る。
−モンテーニュ(思想家/フランス)−
・ある物語を聞き取るための耳が熟成するには、長い時間が流れなくてはならないのです。
−フランツ・カフカ(作家/オーストリア)−
・住宅は、住む為の機械である。
−ル・コルビュジエ(建築家/フランス)−
...続く...
■ 建築設備について
皆さんが、例えば公立の図書館に入った時、最初に何をするでしょうか。初めて利用する場所であれば、受付の位置をさっと確認し、館内の案内板を探しておおよその間取りや、本の配置を確かめようとするでしょう。
例えば、豪奢なホテルのエントランスをくぐった時、あなたは何を感じるでしょうか。広い空間、高い天井に立派なシャンデリア。センスの良いソファーにふかふかの絨毯。ちょっとした異世界を味わうことでしょう。
例えば、よそのお宅を訪問した時、あなたは何を見るでしょうか。玄関の広さ、リビングの吹抜け、洒落たシステムキッチン。整理された小物たち。他人の生活空間には、自分の生活を変えるちょっとしたヒントが見え隠れしています。
さて、それらの建物を後にした時、あなたはその建物のどれだけの事を憶えているでしょう。ガラスに囲まれた開放的な空間、華やかな壁の色、自分の家のダイニングに置きたいようなテーブル、等々、自分の感覚や視覚に訴えてきたものばかりではないでしょうか。
多くの人は、どのような形の照明器具が付いていたとか、冷暖房用の空調機が天井埋込型であったりとか、そういうことは殆ど憶えていないと思います。明るい、暗い、広い、狭い、といった空間認識や、暑い、涼しいなどの体感上の認識は感覚的な記憶として残るでしょうが、明るい暗いの先にあるもの、暑い涼しいの先にあるものにまで視線を伸ばし、さらに記憶に留める人はそう多くはいません。
それはどうしてでしょうか。生活や仕事のシーンにおいて、設備機器が正しい計画の下、適正に機能している場合、人はその存在を意識しません。もちろんそれは悪いことではありませんし、私たち設備設計者にとっては勝利とも言えるでしょう。
空気のように、恩恵を受けながらも存在が意識されにくいもの、それが建築設備です。意識され難いが為、軽んじられることも多く有ります。即ち、照明なんか付いていれば構わない、空調なんて効いていれば何でもよい、..等々。しかし、その代償が無かった訳ではありません。
■ これからの設備設計
長く軽んじられた結果、機能は条件を満たしているものの、印象に残らない設備を内包した建物が数多く誕生しました。それは同時に、私たち設計者が、機能優先、予算最優先の呪縛に屈し、施主への提案・説明を怠ってしまった結果でもあります。
最近、人々は物質的な豊かさの持つ物理的限界を意識するようになり、次に求めるべき豊かさを模索しはじめています。唯物ではなく、精神的に豊かである重要性が再認識される一方で、それが物質的な豊かさと切り離しては存在できないことも私たちは知っています。狭義の意味で、豊かさを生活空間とするならば、この分野において設備が担う役割は決して小さいものではないでしょう。
お金を懸けなければ出来ない機能(設備)が厳然と存在する一方で、時代の進歩は、機能優先だけで練られた予算の中で、全く別の価値・機能を持たせた設備を生み出すことを可能にしました。豊かさの延長にあり、機能的で、そして普段意識されない設備を生み出す努力をすること。それにより、設備設計は本当の黎明期に入るのかも知れません。
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