平和と基本的人権を守ろう仲間たちの連絡会(略称 へいき連)

声・呟きNo144            webへいき連             2023年 5月 2日

<声・呟き>

衆議院法務委員会の様変わりに驚き
-入管法改正案、自公、国民、維新賛成で可決-

一昨年廃案となった入管法改正案が再度国会に上程され、4月28日の衆議院法務委員会で可決されてしまった。 このような採決を行った衆院法務委員会のメンバーの議論からいかにひどい審議が行われたか、を知ってもらいたい。

1. 今国会での衆議院補選法務委員にみるトンデモ議員は

なぜこうも早く衆院法務委員会で可決されてしまったのか。その手掛かりは法務委員会にあると考える。まずそのメ ンバーの発言を見てみよう。
谷川とむの写真  ・自民の法務委員筆頭幹事の谷川とむ氏(大阪19区、旧安倍派)、この人はウィシュマさん死亡に関するビデオを見 て「視聴前と印象が違ったのは、入管職員が思ったより『献身的』にウィシュマさんを看病していた」と述べた。このこ とだけでも呆れてしまうしかない。彼はこの演説のしめに「安全・安心の社会をつくるため本法案を成立させる以外な い」と入国した外国人を取締る法律、との考えを披歴した。
 国民民主の鈴木義弘氏、この人はいわゆる「仮放免中の逃亡外国人」の捜査の現状を質問。意識はまったく自民の谷川 氏と同じである。この鈴木氏は昨年の法務委員会で「外国駐在の大使館で鈴木義弘の写真来日予定の外国人について難民希望受付をできるようにすれば、国内に難 民希望者が溜まることはない」という趣旨の質問をしたのである。法務省も外務省も一緒くたにした思考回路には、これ また呆れるほかない。彼は難民を入国させないことを優先に考え、彼らの人権に配慮する感覚が欠如している。
 ・維新のうるま譲司氏などは「この難民問題を大阪万博でのテーマにしたい」と発言、『維新あるある』の大阪宣伝に 矮小化している始末である。
 ・自民の牧原秀樹氏、公明の大口善徳氏は「ウィシュマさんの悲しい事件」と同じ表現を繰り返した。ウィシュマさん という女性が偶然不幸な事件に遭って死んだかのように矮小化している。しかし彼女は現在の入管制度という歪んだ組織 によって殺されたのである。「悲しい事件」などというのは許せない表現だ。

漆間譲司、牧原秀樹、大口善徳の写真

寺田学の写真 ・立憲の寺田学氏は「(2年前の審議の)反省は入管という組織を叩くことに力を注いだことだ」と述べ、批判ばかりで はいけないから、提案もしなければいけない、と暗に妥協を仄めかしているのだ。そして入管職員から「家族にも入管で 働いていることを言えない」といった意見を聞き同情すらしているのである。彼は職員個々の資質に問題をすり替えてい るのだ。また寺田氏は、よりによって維新が招聘した福山宏参考人について称賛するほどの意見を述べた。この福山宏参 考人は元東京入管所長で、自称「入管所内タカ派」を自認してい寺田学の写真るのである(過去のインタビュー記録より)。寺田氏のこのような演説内容に、 斎藤 法務大臣は謝意を示したのである。私は言いたい、「寺田さん、あなたはどこの党の法務委員なのですか?」と。この寺 田氏は実は立民の法務委員筆頭幹事なのである。小西議員を参院憲法審筆頭幹事から外すのではなく、この寺田氏こそ外 すべきである。

2.立憲民主党は「修正協議」で論戦 米山議員は立場に固執せず廃案訴える

自民、公明、維新の法務委員のびっくり発言に見られるように、どうもこの委員会は一昨年、同法案を廃案とした時 とは違うようだ。3月に小西参議院議員が衆議院憲法審を猿にたとえたが、この法務委員会も問題が多い。それを決定的 にしたのは、自民、国民、維新が法案修正協議を行うことに合意し、この修正協議のテーブルに立憲民主党が加わってし まったことである。例によって産経新聞は「修正協議で立憲民主党混乱」と書き立てた。
寺田学の写真  この修正協議の問題で、協議参加について積極的に賛成した米山隆一議員について述べておきたい。米山氏はSNSで 「廃案一択といった論議は感情論」と発言した。私はこの意見に同意しなかったが、私と同じ意見を持つ人、あるいは入 管法と闘う指宿弁護士なども米山氏を論難する方に加わった。産経新聞はこの立民の内輪の論戦を「混乱」とデマ報道し たのだが、結局、長妻昭政調会長は修正案を不満として反対を決定した。
 米山議員も立民の党決定に従い、「廃案にせよ」と演説したことで、産経新聞報道はデマであることが判る。米山氏に は今後も廃案一択に意見を変えてもらい、本当の意味で一致して戦列に加わってもらいたい、ということは今後の課題で ある。

3.立民の法務委員会での修正協議から離脱の意義

修正協議は日本維新の会の当初からの方針であった。これに立憲民主党が乗ろうとしたのは、今国会での経緯から考 えれば必然であったともいえる。しかし立民の人権派議員は入管法改正案修正ではなく、「廃案一択」の世論に従ったの である。おそらく修正協議からの離脱によって立民と維新の距離は遠ざかるだろう。そしてそれは自然の成り行きで、歓 迎すべきことと私は考える。

4.法案修正協議で出された事項とは

趨勢で削除とする箇所について検討してみよう。①送還停止効例外規定の一部②「テロリスト」二重の「疑い」(内 容については紙員の関係で省略)の2点については、過去例がないものなので削除しても影響なし。(※「送還停止効」 とは難民申請回数や犯罪者であっても難民手続中は送還できないこと)
 そして附帯、付則が付けられた。とくに立民主張の「難民審査を第三者機関で」という要求は、「検討する」との文章 で付帯決議と提案された。これは「棚ざらし」にされることは明白なのである。しかも立民が修正協議に乗らなかったの で、修正に入らなかった。
 最後になるが、201人の子供たちに在留特別許可を出すという立民を修正協議参加に誘うための措置として政府・与 党が出した検討である。これは現行法でも十分に可能で、要するに入管がすぐにでもできることなのだ。だから法案審議 と次元が異なる問題なのだ。

5.入管法反対(廃案)の声を拡げよう

28日の法務委員会採決で絶望することなく、入管法改正に反対する弁護士や支援団体は決意を新たにしている。憲 法集会も含め、入管法改正反対の声をあげよう。
 なお、末尾に映画「牛久・予告編」と、YouTube放送「デモクラシータイムズ『“国際法無視のならず者国家”でいい のか』のQRコードを付けますので、スマホで視聴願います。

難民問題に取り組む弁護士
映画「牛久・予告編」とYouTube放送「デモクラシータイムズ『“国際法無視のならず者国		家”でいい		のか』のQRコード

2023年 4月30日 滑川整流