平和と基本的人権を守ろう仲間たちの連絡会(略称 へいき連)

声・呟きNo138            webへいき連             2023年 3月14日

<声・呟き>

小西議員が攻める本丸はなにか?
-放送法解釈変更を取り消させること-

国会では小西洋之議員が暴露した総務省の内部文書をめぐり高市早苗経済安保担当相が「捏造だ、もしそうでなかっ たら辞職する」とかつての安倍晋三もどきの発言で話題になっている。(以下、総務省文書を便宜的に「小西文書」と表 記する)
 しかし、ちょっと待て! 高市早苗の閣僚辞任や議員辞職など問題ではないのだ。小西議員の国会質問の目的は、かつ て高市元総務相が行った民放各社に対する「電波停止」の問題がテーマなのだ。つまり高市氏がしたこの国会発言が「事 実上の放送法の解釈変更」とされていることを、岸田政権に取り消させることが目的なのである。図で示す時系列は、磯 崎元総理補佐官と安倍晋三の暗躍が事実としてあったことを示しているではないか。(以下、敬称略で記す)

小西文書の内容と安倍政権の報道に対する圧力の時系列

1.孤立無援の高市経済安保相

 この小西質問に対する高市大臣の対応は極めて準備不足であり、無防備であった。第一、小西文書は78枚あるのに、 高市の名前がある4枚しか読んでいないことを素直に白状している。それに対し、質問している小西議員は総務省出身の 元官僚であり、小西文書に登場する総務省の安藤友裕情報流通行政局長は昔の上司、という関係だった。小西の古巣であ る総務省の知人から託された文書が真正の公文書か否か見抜く力量を当然ながら有している。その小西に高市は「この文 書は捏造だ」と言い放ったのである。物事を知るものならば嗤うべき失態だろう。しかも小西から質問を受けたその日に は、張本人の磯崎元総理補佐官が安藤局長と打ち合わせしたことを会見で述べたのである。(共同通信)
 小西によれば、国会質問のルール上事前通告もされていた。その状況下、高市の答弁書を作成する任にある総務官僚た ちが、小西文書を全く読んですらいないことも事前に知っていた。そして質問当日に高市の反応を見て、その事前の情報 が正しかったことを知ったので、高市の捏造発言に対し、職を賭しての発言か、とたたみ掛けたのである。その問いかけ に高市は「結構ですよ」と応じた。だが高市の出番はここまでである。小西も高市に辞職発言を引き出し、そのため新聞 も世論も高市批判に傾き、小西文書の信頼性はむしろ高まったのである。

2.「電波停止発言」までの過程を知ることができる重要な文書

 小西文書で明らかになったことは、総務省に放送法解釈変更で圧力をかけた張本人が磯崎陽輔元総理大臣補佐官という ことである。ところで磯崎は国家安全保障と選挙制度が担当であった。つまり放送法に関しては管轄外であり、磯崎のし たことは内閣法違反に該当する。だからこそ、小西文書中には磯崎の圧力について「やくざまがいの人物にからまれた」 などの表記あるのだ。
 小西文書で明らかになったことは、当然のことであるが放送法解釈変更という難題を持ち込まれた官僚たちが防戦に躍 起となった事実である。そこで総務省から総理秘書官となっていた山田真貴子を呼び、磯崎を説得しようとした。しかし、 磯崎は「お前たちをクビにできる」と凄んだ。そこで山田は菅官房長官(当時)を援軍としたかったが、それも磯崎は 「俺と総理が仕切るのだ」といって山田の意図を封じたのである。そこで総務相である高市に話が持ち込まれた。 当初、高市は「どうしてもやるの?」と懐疑的で消極姿勢を示した。しかし安倍晋三が「元々、放送法の解釈自体がおか しい」という持論に徹したので、高市は安倍の尻馬に乗ったのである。

小西文書が示す報道への圧力相関図

3.石橋通宏議員も予算委員会で追及し、解釈変更の撤回要求

3月6日参院予算委員会にて石橋通宏は政府に対しきっぱりと放送法の解釈変更を撤回することを要求した。また、 改ざんだとか不正確だと主張している高市に対するレク(説明)に関する文書について、早急にその存在を確認すること を要求した。その上で「議員も大臣も辞任する」と言った安倍総理の発言で財務省が書類の改ざんされた前例を繰り返す な、と岸田総理にくぎを刺した。また、小西文書からは「いかに国会で一芝居をうって、放送法の解釈変更の既成事実を つくるか」といった国民不在のたくらみしか読み取れない、と喝破したのである。
     ( 動画は  https://www.youtube.com/watch?v=Md6gTtNscaY )

4.NHK「クローズアップ現代」で現実化した個別番組への権力介入

かんぽ生命の不祥事は記憶に新しい事件である。日本郵政グループの2019年はこの事件で経営陣含め大混乱の一年で あった。ところで、この不祥事を最初に報道したのはNHK「クローズアップ現代」(2018年4月24日)であった。「郵 便局が保険を押し売りしている」という郵便局員の告白がきっかけだった。
 しかし、本来ならこのまま事件の真相解明に近づくはずだったのが、日本郵政グループ幹部がNHK経営委員会に圧力 をかけ、「クローズアップ現代」の番組つぶしを行ったのである。
 この一件についての詳細については割愛するが、高市の停波発言から約3年後に起きた事件を振り返れば、民放やNH Kが如何に報道番組に圧力を受けてきたか物語っている。

5.法解釈変更という既成事実を隠す岸田無法政権を打倒しよう

小西文書はたまたま今公開されたのではないことを最後に言いたい。小西自身が吐露しているところでは「満を持し て」ということらしい。どういうことかと言えば、今国会の前、つまり臨時国会では会期が短い、そこで今の国会で文書 を公開、そして質問することにした。つまり放送法の「事実上の解釈変更」を白紙に戻す闘いはそのくらいの期間が必要 と考えたのである。
 「事実上」といったのは、「集団安保合憲」といった解釈変更と違い、政府は放送法に関しては「法解釈変更」と公言 していないのである。無論、内閣法制局も関与していない。それほどに現在の自民党政権は法解釈変更を軽く見ており、 「閣議決定」も省略するような勢いなのだ。入管法閣議決定と同日に開始された小西文書による追及を、岸田政権打倒の 闘いに盛り上げていこうではないか。

2023年 3月14日   滑川整流