z
塩澤さんは今年、2006年「大地の芸術祭」でまた素敵な作品を見せてくれます。「ハビタンボイナゴ」を製作中。 誰にもわかりやすいことを心情にしている、優しい作家さんです。 作品の前に立つと不思議に素直になってしまう・・・今から楽しみにしています。制作や設置など、また重い作品!のようです!会期初旬には、「公開制作」が見れるかもしれません。 楽しみです〜 前売り割引チケットを扱う予定です。どうぞお申し込みください。 hedawhig 野口純 |
大地の芸術際参加作品 翼/飛行演習装置 作 塩澤宏信 場所・新潟県東頚城郡犬伏・火葬場跡 素材・陶 大きさ・高さ/約4メートル・幅/約1,5メートル なぜ火葬場か?死と再生のために。 「翼/飛行演習装置」が置かれるその場所は、犬伏という集落の火葬場だったところである。数十年前まで、この場所で亡骸を荼毘に付していた。 火葬場跡は道のどん詰まりの穏やかな空間で、正面に石仏がありその両脇に、二本の立派な杉の木がある。石仏に向かって左側に十二体の小さな石仏が並んでいる。 はじめてその場所を訪れたとき、静かに亡骸が焼かれ、炎と煙が立ち昇る様を想像した。死者の魂は、大きな杉の木と石仏に見守られながら炎と煙と共に天に昇って行く。そして天に昇った魂は、灰と供に、また雨や雪と供に、やがて地上に再び静かに降りたったのだろうと。 翼/飛行演習装置は、一対の翼と椅子で構成されている。人は翼の間の椅子に座る。正面には二本の杉の木と石仏が見える。そして静かに目を閉じ、自分の行きたい場所、行きたい時間、行きたい人の所に飛んでいくことを想像する。かつて死者の魂が炎と共に天に昇っていったように。 言わば、これは自分が死んだあとの飛行練習をするための装置である。死ぬということは大変恐ろしい。しかし人はいつか必ず死ぬ。とても悲しい事でもある。しかし魂はいつかきっと地上に舞い戻り、「物語」はずっと続いていくのではないだろうか? 医学が発達し寿命が長くなり、かつ核家族化が進み、人の死に触れる事が少なくなった現在、あえて「死」というものを積極的に想像してみる。そして自分の魂がただ一つだけ存在するわけではなく、祖先から連綿と受け継がれ、そして更に新しい魂が続いて行くことを想像する。そして今一度自分が「生きている」「生かされている」ことを確認できればと願う。 今、火葬場は機能していない。これから年月が過ぎていくと、その場所で何が為されていたか、記憶する者は石仏と杉の木以外いなくなってしまうときがいつか来る。そのとき、翼/飛行演習装置が、石仏や杉の木と共に「場所の記憶」のシンボルとして、死んでいった人たちと、生きている人たちをつなぐ手がかりとなればと思います。 塩澤宏信 |
*