このいのち「利他の行」に還元しましょう
文化が発達し、生活が豊かになれば平和で楽しい社会が生まれてくると、誰もが想像するものです。しかし、心の世界はそんなに単純な物ではありません。豊かになればなるほど人間は欲深くなり、これに悪知恵がからみついて悪事を働き、むしろ人をだましてでも欲望を満たそうとします。加えて、目先の知恵が発達すると、宗教心は薄れ、自分を反省する心も無くなり、自分さえよければいいという行動が現れてきます。
哲学者ソクラテスは「宗教を忘れた文明、宗教を忘れた豊かさは、悪魔を作っていく」と言いました。
生まれたての頃には全く無力であった自分を、両親はどんなに苦労して育て上げてくれたことでしょうか。何も知らなかった自分を教育してくれた師。自分を励まし、慰めてくれた友。空気や水、食物を恵んでくれる大自然。
私たちは、無尽の恩に支えられて生きているのです。こうしたことを自覚させてくれ、感謝することを教えてくれるのが宗教といっていいでしょう。
世の中に生かされている私たちは、その恩に報い、社会や自然と共存し、自分も他の人も共に楽しめる「利他の行」をしなければなりません。
平成12年8月1日