-55章-
精霊の伝説



 広大な空間は深い闇を思わせるほど広く、うすら寒く感じる。
 冷気がこの場を満たしているというわけではない。その寒さは、恐怖から来るものだ。
 魔の頂点に君臨する魔王の瘴気は圧倒的で、それに対抗する光の力も威圧感も同時に存在し、その二つが混在するこの場は、立っていることすら辛い。
 三界分戦を戦った人間たちは、いつもこの恐怖に立ち向かって行ったというのか。
「う……」
 呻きながら、エンは立ち上がった。その際に、ひどい頭痛を伴いながらも、今どうなっているのかを把握しようとする。
 まず目に映ったのは、温かい光だ。真っ白な光に包まれ、視界がぼやけている。
 だが、この光が身体を癒してくれているかのように、次第に意識と視界がはっきりしてくる。
「って、なんだこれ!?」
 驚くのも無理はない。光の発生源は、己の持っている道具袋から発生しているものなのだ。
「エン、気がついたの」
 と、イサが言った。正直、エンが立ち上がった時に、また様子がおかしいのではないかと不安になったものだが、今の彼を見るとそれはないようだ。いつも通りのエンだ。
「どうなっているんだ? ロトルは?!」
 エンにとっては、ロトルが勇者の剣を掲げた後の記憶がまるでないのだ。自分が仲間に襲い掛かったことなど、覚えていない。
 辺りを見渡すと、すぐに探していた相手は見つかった。ロトルとジャルートが向きあい、ジャルートは忌々しそうな表情でロトルを睨んでいるではないか。そしてロトルは、神秘的な光を纏っていた。その光はエンから、更に正確にいえばエンの持っている道具袋から流れている。
 肝心のロトルは、エンが立ち上がったことを歯牙にもかけず、ただジャルートを警戒しながら光の玉から流れる力を操っていた。
「これで僕の勝ちだね」
「く……=v
 光の玉の力は、明らかにジャルートを弱体化させている。それが解りすぎる程、その構図は一方的であった。
「聖邪の宝珠(オーブ)は放っておいてあげるよ。さようなら、『孤独な魔王』」
 ロトルの身体が光に包まれ、その光と同化して一瞬で消える。
 先ほどは弾かれた結界をも突き破り、ロトルはこの場から脱した。
 ジャルートは手出しすることさえできず、ロトルが消えた虚空を睨むばかりである。
「あれ? 光の玉が……」
 ロトルが姿を消したのと同時に、エンの持っていた光の玉が同じように消え去り、再び辺りに瘴気が充満し出した。発動させたロトルとの関係が切れたのだろう。その効力が失われて、改めてどれほどの瘴気を減らしていたかが実感できた。
 それほどまでに、ロトルという存在は強大だったのだ。

「ロトルは消えちまったけど、さてどうしたもんかな」
 瘴気に満ちた空間の中、エンはなんとも気が抜けたように言った。
「どうしたもんかって……ここまで来ておいて何を言っているの」
 イサの言う通りである。ロトルがいなければ、本来ならこうして魔王と対峙し、死闘を繰り広げていたかもしれない。その状況になっただけだ。目の前に斃すべき標的がいるのは変わっていない。
 ただ、エンもそれは解っているのだ。
「そうだけどさ。なんかこのまま魔王と闘うってのも、なーんか納得できねぇんだよな」
 今、何が起きているのか。解らないことが多すぎて、ただ単純に魔王を斃せばいいという問題ではなくなっている気がする。
「そういうわけだからよ、どうなっているんだ?」
 エンが問いかけた先。そこには強大な闇が存在している。その場に存在しているだけで他を圧倒する、魔王ジャルート。
 だが不思議と、殺意や悪意などは感じられなかった。
「貴様らの知っている通りだ。我は、世界を滅ぼそうとしている=v
 律儀にも、魔王が答えた。
 確かにそれは、四大精霊たちから聞いた話ではあったし、人間界(ルビスフィア)にいた頃は魔王の目的は世界を滅ぼすことだと伝えられていた。それでも、不可解な点が幾つもあるのだ。
「こんな魔界の奥底に閉じこもってか?」
 世界を滅ぼす、という危険極まりない行為であるというのに、魔王は魔界に籠ったまま動きを見せていないのだ。エンたちが四大精霊の情報を集める間、魔王がどこぞの国を滅ぼしたなどという話は一切聞いていない。
 魔王復活後に唯一攻撃を受けたのは、ウィードだけなのである。
「聖邪の宝珠(オーブ)が放つ無限の魔力は局地的な物に過ぎぬ。故に、その魔力を溜め込み、爆発させる必要がある=v
 人間界(ルビスフィア)でおとぎ話に近い伝説として知られている聖邪の宝珠。それは究極の光の力と、究極の闇の力を解放するための宝珠である。城一つを浮かし、死者の魂を別の肉体に宿らせることさえ可能にするほどの魔力は、しかし広域的な爆発力を持たない。
 そのため、世界を滅ぼすほどの力は、単体では不可能なのだ。
 しかし世界を滅ぼすための魔法を発動させる為の力になるのは確かである。
「まさか……!」
 世界を滅ぼすほどの、魔力を爆発させる。その言葉から、イサとラグドそしてホイミンは思い当たるものがある。
 かつて、魔道国家エシルリムで発動されそうになった、封印されていた崩壊の究極魔法。
「『マダンテ・ギガ・ムグル』を使うって言うの?!」
 その片鱗だけで、広大大陸と呼ばれていた東大陸は島々に分かれる程、大地に亀裂が走り、分断大陸と化してしまった。もし発動されていれば、本当に世界が滅んでいたかもしれないのだ。
 霊魔将軍ネクロゼイムの陰謀を防いだために封印されているままのはずだ、とイサたちは思っているが、仮に封印されたままだとしても、聖邪の宝珠を使えば再現することは可能なのだ。
「マダ……なんだそれ?」
 当然、エンたちは知らない。
「マダンテを超える破壊魔法よ。発動する前の片鱗で東大陸を、分断大陸に変えてしまうほどの!」
「風の精霊が考えていることは、半分は正解だな=v
 エンの質問を無視して、ジャルートが答えた。
「どういうこと?」
 そこまで言われたら、イサとて真実が知りたくもなる。
「我が発動させようとしているのは、それだけではないということだ。貴様ならわかるであろう、炎の精霊を持つ者よ=v
 魔王の視線が、エンに集中する。
 世界を滅ぼす魔法。それを聞いて思い出すのは、エンとルイナにとってはただ一つだ。
「『ギガ・メテオ・バン』か……」
 エンが大賢者リリナから『ビッグ・バン』を教えてもらった時のことだ。リリナはその魔法を禁呪とし、教えなかったが、彼女の魔道書から独力でエンが完成させてしまった魔法。
 事実、エンの『ギガ・メテオ・バン』の影響により世界に時空の穴が開いてしまうという事態にもなった。しかしそれは魔王ジャルートが放った『ビッグ・バン』により抑え込まれていた状態だった。即ち、完全に発動はしていなかったのだ。もし完全に発動していたならば、世界はもっと大変なことになっていたはずだ。
「そう。その二つの魔法の混合魔法を、複数の世界で同時発動させる=v
 霊魔将軍は言っていた。
 ギガ・メテオ・バンは世界にダメージを与え、マダンテ・ギガ・ムグルは物質を消去すると。
 その二つが同時に発動されれば、世界は塵となって消えてしまうだろう。
「そうやって、魔界以外を滅ぼすっていうのか!」
「……違うな=v
「は?」
 ジャルートの否定に、今にも飛びかかりそうだったエンの勢いが削がれる。
「我が滅ぼす世界。それは、この魔界も含めて全てを滅ぼす=v
 言われた言葉の意味が浸透するまで、エン以外でさえしばらくかかった。

「魔界も、だと……?」
 ようやく言葉を発したのは、聞き間違いではないかという期待を持ちながらのエンである。
「そうだ。そして我自身も――=v
 世界を壊して自身を唯一の存在にでもする気か、と思ったがそれも違うらしい。
 ジャルートは間違いなく言った。自身を含み、全ての世界を滅ぼすと。
「そんなに滅びたいんなら、一人で滅んでいろよ。他の世界を巻き込むんじゃねぇ!!」
 こうして魔王相手に喧嘩腰で話せるのはエンくらいのものだろうが、実際に他の皆も同じ気持であった。
「それでは意味がない。全ての世界が同時に消滅しなければ、我が夢は叶わぬ=v
「とびきりの悪夢じゃねぇか」
 エンが吐き捨てるように言った。
 世界もろとも全てを塵にするということを夢というならば、悪夢以外の何物でもない。
「ならば邪魔をしてみるか。『インフィニティア』の入手が叶わなかった以上、貴様らを生かす理由もない=v
 魔王の視線が、四大精霊全てを見渡す。興味をなくし、言葉通り無意味と化したものを見るような目である。
「『インフィニティア』?」
 またエンが首をかしげる番だった。
「そっか。エンは気を失っていたから知らないんだね」
 ついさっきのことなのにもう忘れてしまったのかと思ったが、違う。エンはロトルの去り際を知らないのだ。
「何を?」
 だから、知らなくて当然なのだ。
「ロトルが言っていた。恐らく、三界の力を一点に集中させた力そのもののことだろう」
 と、ラグドが説明した。
 かつて世界を三つに分けた三界の合成魔力。ロトルの剣に吸い寄せられた力を考えると、それが答えになるだろう。
 神界の力を持つロトルがいないのだから、今この場に再び『インフィニティア』ができあがることはない。そして魔王ジャルートも『インフィニティア』入手を狙っていたというのならば、それも叶うまい。
「『インフィニティア』があれば、すぐにでも世界消滅は成せたものだがな=v
 ロトルが奪い去っていなければ、今頃は世界の全てが消滅していたのかもしれない。そう思っただけで冷や汗が流れ落ちる。
 聖邪の宝珠による魔力を抽出し、世界消滅を行うには時間がかかる。それなら、世界を三つに分ける程の威力を発揮した魔力を使ったほうが手っ取り早いのは確かだ。
「長年かけた計画の一つは、無駄に終わってしまった=v
「どういうことだ?」
「我は最初から『インフィニティア』入手を狙っていた。人間界を侵略すれば、必ず神界の神々が干渉してくる。そして、人間共もただ指をくわえて見ているだけではないだろうと踏んだのだ。だが、我が最初に人間界を見た時は落胆したぞ。長年の平和により人間たちは脆弱になっていた=v
 これでは、『インフィニティア』の生成はできない。そう判断したジャルートは、二つの計画を実行した。
 一つは、聖邪の宝珠を探し求める事。しかしそれを作り出すために必要な二つの宝珠――極聖の宝珠と極邪の宝珠のうち、極邪の宝珠は簡単に見つかった。元来、邪悪なる魔力に強く反応するものなので容易なことだったのだ。しかし極聖の宝珠は、いくら探しても見つからない。極邪の宝珠とは逆で、封印の在り処が、魔族の持つ魔力ではわからないのだ。
 誰かが封印を解き、それを持ち出すことが無い限り、永久に見つからないはずだった。
 しかし、その封印が解かれた。封印自体は、魔法に通じた人間なら簡単に解けるものだったのだ。
 ついに見つかった極聖の宝珠を奪い取り、聖邪の宝珠は完成した。
 問題があるとすれば、やはり無限の魔力解放が局地的なものでしかないということだった。
 それは時間をかければ良いだけの話なので、それとは別の、もう一つの計画を同時に進めていたのだ。
 それが、人間界を攻める事だ。
 魔王の存在が人間界を脅かす事で、数多い人間たちのうち、誰かが立ち向かってくるはずだ。
 それに加え、世界の状態を維持しようとしている神界の神々も介入してくるだろう。
 最初は、魔王の存在を知らしめるために、死魔将軍たちを使い、人々を絶望に追いやった。
 魔王の存在こそが、悪であるという事を世界に知らしめるために。
 狙い通り、立ち向かう人間たちが出てきた。
「それが勇者ロベルであったのだ=v
 だが、そこまでは計画通りだったが成功とは言えなかった。
 勇者の存在までは良かったものの、人間たちで決定的に足りないものがあったのだ。
 勇者ロベルたちが魔王と戦った時と、今この状況での決定的な違い。
 それは、四大精霊の存在である。
 ロベル達は当時、四大精霊の力を手に入れるという考えはなかったのだ。
 挙句の果てに、神界の神々は直接介入してこず、勇者の武具を通しての、えらく間接的なものだった。
 これでは、『インフィニティア』は完成しない。そう思ったジャルートは、一度身代わりを立てて魔王の存在がなくなったことにしたのだ。
 そして時を経て、魔王が復活した事を世に知らしめた。
 前回と同じように、ただ斃すだけでは意味がない。
 そう思わせる事で、人間たちに更なる力を得るように仕向けたのだ。
 狙い通り、勇者ロベルは四大精霊の力を得れば良いのでは、という考えに至った。
 勇者ロベルは死んでしまったが、その意思を受け継いだエンたちは四大精霊の力を得て、全ての四大精霊を魔界へと連れてきた。
 そこまで来れば、さすがに神々も直接介入してくるはずだったので、狙い通りだったというわけだ。
 魔王復活後の行動には不可解な点があった。かつて勇者ロベルが生きた時代は世界を絶望に染めようと人間たちを攻めたが、復活してからはウィードを滅ぼす以外は何もやっていないのだ。
 今の話が本当であれば、辻褄が合う。
 ウィード崩壊の事実があったからこそ、イサは魔界に攻め入ることを決意し、ラグドもそれに従った。
 四大精霊を得た人間と、神界の者と、魔族。その構成が再びできたのだ。
「最初から仕組まれていたって言うのか! オレ達がここまで来るという事まで?!」
 随分と長年を要する計画だが、実際に『インフィニティア』は一度完成している。
 それは、魔王の思惑通りだったというわけだ。
「けど、ここに来るだけでいいなら、どうして死魔将軍をけしかけたの」
 エンばかりが魔王と対話しているせいか、イサも少し場の雰囲気に慣れてきたらしい。ふと思いついた疑問を口にした。
「奴も試していただろう。死魔将軍に負けるような弱者であれば、『インフィニティア』は完成しない。所詮はそこまでだったということだ=v
 それを言われると、イサは複雑な気持ちになる。他の皆は死魔将軍を打ち倒しているが、イサだけは氷魔将軍ネルズァに手も足も出なかった。斃してしまったのは、ロトルなのである。
 だが『インフィニティア』が完成する瞬間、ロトルの持っていた勇者の剣により潜在能力が強制的に引き出されていた。今の状態ならば死魔将軍に及ばなくとも、その力を完全に引き出すことができれば『インフィニティア』を生み出すための条件を満たすのだ。
「その線引きをする為に、死魔将軍を使ったというのか!」
 ラグドが悔しそうに言った。
 彼が戦ったガーディアノリスは、騎士道精神のもと、主たる魔王ジャルートの為に戦っていた。それが、『インフィニティア』完成のための物差しにされたとなれば、報われないような気がしたのだ。
「我が死魔将軍たちは『インフィニティア』計画の為に、随分とよくやってくれたものだ。勇者ロトルの時代も、今の時代もな=v
 魔王の口調の中で、どこか彼らを労わるかのようなものを感じた。部下をただの道具か何かのように扱っていたわけではないようだ。
 ガーディアノリスは『使命を果たした』と言っていた。死魔将軍は、魔王の目的を承知の上で闘っていたのかもしれない。
「……ネクロゼイムが言っていたことって」
 魔王の語った話が本当ならば、イサは一つ気になっていたことがあった。
 かつてエシルリム塔城で霊魔将軍ネクロゼイムが言っていた、魔王への復讐。
 マダンテ・ギガ・ムグルを用いて、物理的に世界を壊すというものだった。魔王の狙いが、世界同時消滅だというのならば、確かにルビスフィアを先に壊してしまえば、それは叶わなくなる。なんとも迷惑な復讐の方法ではあったが、魔王の目的の方がよほど凶悪である。
 そして、彼は言っていた。魔王の望み通り、人々を絶望に追いやったはずだが、魔王はネクロゼイムを追放した、と。
「ネクロゼイムか。奴は、巧みに動き過ぎた=v
 本来なら、死魔将軍は魔王の存在を知らしめる為に人々を絶望に追いやる役目だったのだ。
 フォルリード、ネルズァ、マジュエル、ガーディアノリスはその意味では十二分な働きをしてくれた。
 だが、ネクロゼイムは。
 確かに人々を絶望に追いやったが、そのやり口はネクロゼイムの存在を感じさせないものだったのだ。人々の心を利用し、人同士を争わせ、深い絶望を与え続けた。諸悪の根源に誰も気付く事が出来ず、しかし争い合い、憎しみ合った。
 だからこそ、死魔将軍として名を轟かせる事もなく、その行動が不本意だった魔王はネクロゼイムを追放した。
 その後は、ネクロゼイムも好き勝手にやっていたのだろう。魔王の最終目的をその最中で知ったのか、マダンテ・ギガ・ムグルでルビスフィアを先に壊そうとしていた。それは、イサたちの手によって阻まれているが、もし阻止できていなかったらと思うと今更ながらに恐ろしく感じてしまう。
「何にせよ『インフィニティア』を使う計画は失敗した。ならば、もう一つの計画で最期まで進めるまで=v
 つまり、聖邪の宝珠の魔力を用いて、世界同時消滅を引き起こすということだ。
「させねぇよ」
 エンが火龍の斧を構えて、魔王を睨みつけた。
 魔王の不穏な動きは分かったが、だからといってこのまま放っておくことなどできない。
「もともとオレ達はテメェを斃すためにここに来たんだ。そんな話を聞かされたら、なおさら放っておけねぇ」
 エンに倣い、他の皆もそれぞれの武器を構える。
「私も戦う。例え魔王が何を狙っていようとも、風の自由を取り戻す為に!」
 イサの周囲に翠色の光が渦巻く。風の精霊力が呼応しているのだ。
「主を全力で支えるのが我が道。その道に立ち塞がるのならば、打ち砕く」
 ラグドの地龍の大槍にはめ込まれている宝玉が、一際強く輝く。
「放っておけません、から」
 ルイナがあくまで静かに、しかし強い意思を持って言う。
「我に立ち向かうか。邪魔をするのならば、排除せねばならないな=v
 魔王が言った途端、重苦しい空気が辺りを包み込んだ。
 殺意が、こちらに向けられる。目的の邪魔をするならば容赦はしない。そのために、その命を奪い、絶望に追いやる。魔王という名に相応しいほどの威圧感が、びりびりとエンたちの肌をなぶる。
「魔界の王たる力を、死をもって知るがいい=v
「死ぬのは、テメェだ!」
 魔王ジャルートから目に見える程の瘴気と魔力が渦巻いた。
 それに臆することなく、エンは地を蹴り魔王へ立ち向かう。
 エンに続き、ルイナが、イサが、ラグドが、そしてホイミンがしびおが、魔王へ挑みかかる。
 世界の破滅を防ぐ為に。世界を守る為に。





 ――エンたちは、その精神に伝説の精霊を宿した。
 神話の時代とも言える頃に活躍した四大精霊。その伝説の力を、自分のものとすることができたのだ。
 最初から、その伝説の力を持っていたわけではない。
 ただ、強くなりたいと願ったから。
 だから、伝説の力を求めた。そして、手に入れることができた。
 それは、ある意味では人の可能性なのかもしれない。
 人の身であっても、願えば伝説の一つになることはできるのだ。
 エンたちの魔王の戦いは、どうなったのか。
 この後、彼らが、そして世界がどうなったかを知るのは、今までの全てを見た者の記憶の中。
 ただ、物語は今も息づいている。
 伝説は、人の心の中に。
 この物語の伝説の続きは、みんなの心の中に――。


龍求界戦 魔界編 -fin-



・精霊伝説第一部『炎水龍具』でもあったように、55章をもって、完結ということにもできます。
完全な『精霊伝説-龍求界戦-』は56章以降に続きます。
ここで読むのを止めるもよし、続きを読むのもよし。
全ては読者様の判断にお任せします。
ほんとうにありがとうございました――



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