□ □ □ □ □ 7階 飲食店 □ □ □ □ □
全く! オレが何をしたっていうんだ!?
妻の昭子はオレが働いているから生活できているっていうことが分かっていないんじゃないか。絶対にそうだ。そうでなければ、疲れて帰ってきた夕飯がカップ麺一つなんてことは有り得ない。オレの給料だったら、こんな食生活にはならないはずだ。そりゃあ、オレが帰ってくるのは夜中ではあるけど、だからってカップ麺がぽつんと置いてあるのは寂しいにもほどがある。結婚当初は色々作ってくれたのになぁ……。とくに刺身とか、おいしかったな。
だが、今日もテーブルの上にあるのはやはりカップ麺一つだけ。昭子に文句を言おうにも、今日は友人と外出すると言っていたため不在だ。
「……冷蔵庫にはなんかないかな」
期待して冷蔵庫を開けると、そこには刺身が一皿。なんだ、あるじゃないか。『食べることなかれ』って注意書きがあるけど、こっちは毎日カップ麺なんだ。たまには贅沢もいいだろ。
――「それで昭子、あんた免許も知識もないのにフグを刺身にしたわけ?」
「えぇ。きっと猛毒料理になっているわ。一応、注意書きをしておいたから主人は食べないでしょうけど……」
――……。あれ、なんだ空耳か……。幻聴が聞こえるほど、あまりにこの刺身が美味かったのかな、手足が痺れ……。
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