□ □ □ □ □ 3階 家電製品(小) □ □ □ □ □
何気ない日曜日、中古品を扱っているという『亀壷堂』という場所に入った。特に用があったわけではなく、ただの暇つぶしのつもりではあったのだが、古いカメラを見た時に何か惹かれるものを感じた。
亀壷堂の主人に値段を聞くと、それほど高くはない値段だった。祖母がこうしたカメラを、今風のよりも好きだと言っていたので、買って帰れば喜んでくれるだろう。さっそく、そのカメラを購入してから帰宅した。
「おやまぁ、懐かしいねぇ」
そのカメラを見せると、案の定、祖母は喜んでくれた。
「さっそく撮ってあげるよ」
扱い方はいたって簡単で、容易にシャッターを押す事が出来た。ピカリ、と強い光が一瞬だけ走る。
「よし、もういいよ……って、あれ?」
そこに、祖母はいなかった。この手のカメラはシャッターを押して数秒間かかるが、その間に何処かへ行ってしまったのだろうか。物忘れが激しい年頃ではあるが、その間に移動したにしては速すぎる。
「まぁ、どうしたの? そんなカメラ?」
母が部屋に入ってくるなり、まずそのカメラに注目した。それもそうだろう。こんなに古いものが家にはなかったのだから。
「ねぇ、ばあちゃん見なかった?」
「見てないけど……あら?」
母がカメラに近付くなり、足元にあったソレを拾った。一枚の、写真だ。
「これ、お母さんじゃない?」
母の母、ということは祖母である。写真を覗き込むと、確かに先ほどの祖母が写っている。しかし、本人がどこにもいない……。
――ピカリ、と強い光が一瞬だけ走った。
「え?」
気がつけば、母もいない。嫌な予感がした。恐る恐る、足元を見てみると、そこには写真が一枚。拾い上げて、写真に写っているものを見ると、そこには母がいた。
「なんだよ、これ……」
ピカリ、と強い光が一瞬だけ走る……。
翌日。ゴミ捨て場に捨てられた、古ぼけたカメラが一つ。そのカメラが見る先には、大きな空き地がぽつりとあるのみだ。
カメラに、一つの影が重なる。
「久しぶりに、たくさん吸えたかね?」
あの『亀壷堂』にいた主人の老人だ。老人が語りかけたカメラは、古ぼけているのに、まるで他人の魂を吸ったかのように生き生きとしている印象を持っていた。
また翌日。中古品店『亀壷堂』は、何もない空き地へと化していた。
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